2022 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災からの生活再建を制度・生活資源・認識から分析する枠組みの提案と検証
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21K01831
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平川 全機 北海道大学, 文学研究院, 特任助教 (30572862)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 生活再建 / 制度 / 生活資源 / 認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災の津波により被災した人びとがこの10年の間にたどった多様で複線的な定住過程の分析枠組みを提案・検証しようとするものである。2021年度は研究計画に従って先行研究の整理と過去のデータの再分析を行った。2022年度は住宅自体の再建がなされた後の生活をいかに再構築していっているのかについて解明することを主目的として2回の現地でのインタビュー調査を実施した。そこで確認できた主要な項目を挙げると以下の3点がある。1つは、新型コロナウイルスの感染拡大による様々な活動の制約により住宅の再建先での住民同士の交流が進んでいないことである。この影響は自治会などの活動が制約されるというレベルから日常の顔を合わせたコミュニケーションの減退まで複数のレベルで起きていることが分かった。2つ目は、東日本大震災から11年という時間が経過し、また住宅が再建した時点から考えても5年近くが経過し、高齢化やそれに伴う住民の移動などがさらに起きている点である。具体的には高齢者が家族と同居するために移動したり、施設入所による移動や災害公営住宅における孤独死/独居死の発生も見られた。また空き住居に新規の住民が移動しているくることもあり住宅再建後も静的なものとして被災地をとらえるのではなく動的なものとして捉え続ける必要性があることを確認できた。3つ目として、東日本大震災による被災の経験というものが被災経験の差や被災者の選択、それらから生じる生活再建の仕方やスピードの違いによって語られにくい側面があるということである。調査進める上ではこの語られることと語られない/語られにくいことの両面に留意する必要がある。 2022年度はこのように現時点での生活再建の様相の一部を明らかにすることができた。一方でより精緻にまたより多角的に把握するためにはさらなる調査が必要であることも明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は新型コロナウイルスの感染がある程度収束し現地でのインタビュー調査の実施が再開できることを見込んで当初研究計画を設定していた。しかし感染が拡大していた時期も長く、インタビュー調査を感染拡大中であることを理由に断念せざるを得ない場合もあった。そのため研究計画の上での現地でのインタビュー調査の実施についての側面は当初計画から見て進捗が十分ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず遅れている現地でのインタビュー調査を新型コロナウイルスの感染拡大防止に留意しながら積極的に実施していく予定である。その上でこれまでに行った既存のデータの分析と合わせて研究目的である分析枠組みの構築に取り組み、なるべく早い時期に検証に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大時期が想定より長く、計画していた現地でのインタビュー調査の実施を一部見送った。そのため予算執行に遅れが生じている。また既存データのテープ起こし作業を所属先契約のソフトウェアを使用することで予算執行の効率化を行った。そのため次年度使用額が生じた。 次年度使用額は遅れている現地でのインタビュー調査の実施を中心に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)