2021 Fiscal Year Research-status Report
新型コロナウイルス感染症拡大下における、独居高齢者の孤立化に関する実証的研究
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21K01836
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
船木 祝 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (60624921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 武志 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (00364167)
粟屋 剛 岡山商科大学, 法学部, 教授 (20151194)
宮嶋 俊一 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80645896)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 独居高齢者 / 新型コロナウイルス感染症 / 孤立 / 孤独 / 社会的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、札幌市、留萌市、釧路市、黒松内町在住の65歳以上90歳未満の独居高齢者を対象とするインタビュー調査を行なうことにより、新型コロナウイルス感染拡大によって、人とのつながりを避けるように促された独居高齢者の孤立化状況を明らかにすることである。熊本市(九州地方)、東京都(関東地方)にまで調査対象地域を拡げることも目論む。令和3年度(初年度)は、研究実施計画に従って研究を進めた。(1)研究代表者である船木が調査票のインタビュー項目、データ収集方法などを確定させた。(2)本研究計画を勤務先(札幌医科大学)の倫理委員会に申請し、10月に承認を得た。(3) 「月寒ファミリークリニック」、「NPO 法人るもいコホートピア」、「黒松内町国保くろまつないブナの森診療所」、「NPO法人ふまねっと」の調査への協力を得て、調査対象者選定を始めた。(4)それぞれの研究者が専門の視点に立って、新型コロナウイルスの感染拡大下の高齢者孤立化問題に関する研究を進めた。(5)8月に船木、山本、宮嶋、粟屋が、北海道生命倫理研究会第17回セミナーにおいて、文献的研究の中間報告をした。(6) 8月、第8回釧路生命倫理フォーラムにおいて、船木は市民向け公開シンポジウム「新型コロナウイルスの感染拡大下における、高齢者の状況」を企画し、船木、宮嶋、粟屋が報告した。(7)令和4年2月に、船木、宮嶋、粟屋が北海道生命倫理研究会第18回セミナーでの、研究報告「新型コロナウイルス感染拡大と高齢者」において、各々が文献的研究とそれまでの調査を踏まえた報告をした。(8)本研究は、船木が主催する北海道生命倫理研究会をプラットホームとする。(9)宮嶋は、北海道生命倫理研究会発行の『北海道生命倫理研究』Vol.10(2022.3.)において、「コロナ禍と宗教」という観点から、独居高齢者調査の現状と課題について報告を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
札幌市、及び留萌市、釧路市、黒松内町の協力団体から、快く協力を得ることができ、調査対象者の選定を開始することができた。ただし、新型コロナウイルス感染症拡大のため、調査は札幌での2回のみ実施できた。オンラインインタビューも、施設等の利用制限があり、実施できなかった。そのため、他地域の調査の進捗が滞っている。 研究代表者及び研究分担者間で随時メールで意見交換するとともに、年間2回の研究打ち合わせを積み重ねたことにより、研究における諸課題をその都度解決し、研究を進行させることができた。 年2回、船木が夏季と冬季に北海道生命倫理研究会セミナーを主催し、研究成果を報告することができた。夏季には船木が「新型コロナウイルスと高齢者像」、山本が「公共善と公衆衛生行政」、宮嶋が「コロナ禍の宗教」、粟屋が「コロナ禍と現代文明」について、哲学・倫理学、医療社会学、宗教学、法学のそれぞれの観点から、コロナ禍と高齢者問題における現状と支援、社会のあり方について報告することができた。冬季には、船木が「高齢者の孤独と支援のあり方」、宮嶋が「コロナ禍と葬送儀礼」、粟屋が「医師法と国民の健康な生活の確保」について、コロナ禍と高齢者の問題について考察を深化させた報告することができた。 8月には釧路生命倫理フォーラムにおいて、市民向け公開シンポジウムを企画もしくは報告し、研究成果を市民に還元することができた。 北海道生命倫理研究会のホームページを整理し(http://web.sapmed.ac.jp/hokkaido-bioethics/)、研究の概要を公表できるように体制を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
(ア) 個別訪問調査の完了、データ分析(令和4年12月から令和5年3月にかけて):令和4年12月には、札幌市、留萌市、釧路市及び黒松内町在住の独居高齢者のインタビュー調査を完了する。データ分析をおこなう。熊本市(九州地方)、東京都(関東地方)にまで調査対象地域を拡げ、孤独に苦しむ独居高齢者の実態調査をおこなう。(イ)学会及び機関誌等における成果発表:令和4年8月及び令和5年2月には、船木が「北海道生命倫理研究会」を主催し、各自、調査研究の概要を報告する。令和4年8月には、粟屋等が主催する釧路生命倫理フォーラムにおいて、「新型コロナウイルス感染症拡大下における、高齢者の孤独」に関連する公開シンポジウムを開催する。船木や研究分担書は関連学会の大会等において「新型コロナウイルス感性症拡大下における独居高齢者の孤独とつながり」に関連する個別報告をする。関連学会等の研究誌等において、各自、研究成果を報告する。令和5年3月には、北海道生命倫理研究会誌「北海道生命倫理研究」において、各自のこれまでの研究成果を報告する。 (ウ)海外でのインタビューと、資料の収集・分析:ドイツはコロナウイルス感染症下、個人の幸福と共同体の葛藤の問題があったはずである。船木は、ドイツの高齢者の幸福論や倫理的問題に洞見の深い哲学・倫理学者、もしくは、ドイツを代表する高齢者の心理学学者をインタビュー及び資料収集のため訪問する。宮嶋は、コロナウイルス感染症拡大下における高齢者と宗教との関係、教会の役割等を知るために、ドイツを代表する宗教学者にインタビュー調査をする。(エ)研究が当初の計画どおりに進まない時の対応:新型コロナウイルス感染症の状況等を注視しながら、国内調査対象者及び海外研究者への対面インタビューが困難な場合は、オンラインインタビュー等で代替する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は札幌市、及び留萌市、釧路市、黒松内町の協力団体から、快く協力を得ることができ、調査対象者の選定を開始することができたが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、調査は札幌での2回のみの実施となった。また熊本市(九州地方)、東京都(関東地方)での独居高齢者の実態調査はできなかった。インタビュー調査が滞った分の額を令和4年度において、できる限り、対面もしくはオンラインインタビューを実施することにより、計画的に使用する。オンライン調査に必要な備品等、調査地域である留萌、釧路、黒松内、東京、熊本への旅費、録音インタビューのテープ起こし委託料等に使用する。当初の実施計画にあった、インタビュー調査、打ち合わせ、関連学会等での成果発表のための旅費、海外研究、研究補助のための費用を、次のように計画的に使用する。国内旅費:研究打ち合わせのため、札幌1往復。成果発表のため、札幌1往復、東京等に2名を派遣。個別訪問調査のため、調査ごとに2名を派遣。外国旅費:インタビュー及び情報収集のため、1名をドイツ、トリーアに、1名をドイツ、マールブルクに派遣。謝金:研究補助にアルバイトを雇用。その他:通信費である。ただし、コロナ感染症拡大状況や海外情勢によっては変更が生じる可能性がある。その場合、オンラインインタビュー等の代替手段の割合が増える可能性がある。
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Research Products
(14 results)