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2021 Fiscal Year Research-status Report

地域福祉研究に求められる財源確保のためのファンドレイジングの仕組みづくり

Research Project

Project/Area Number 21K01953
Research InstitutionTohoku Gakuin University

Principal Investigator

増子 正  東北学院大学, 教養学部, 教授 (80332980)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 金 美辰  大妻女子大学, 人間関係学部, 准教授 (30517222)
Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords地域福祉 / ボランティア / 活動財源 / ファンドレイジング
Outline of Annual Research Achievements

社会福祉法で社会福祉の基本理念に地域福祉を掲げているにもかかわらず、地域福祉活動を支えるための財源の担保がなされていない。公的サービスだけでは解決できない地域の福祉課題を解決するために活動している住民組織やNPOの多くは活動資金の確保に苦慮している。わが国の住民組織によるボランティア活動は、個人の意志に基づきその技能や時間を活用して社会に貢献する無償の活動として捉えられていて、 活動自体は無償であっても活動に要する資金には焦点が当てられていないというジレンマを抱えている。日本が目指している地域包括ケアシステムにおいても日常生活支援を担う地域福祉活動への自治体からの財政的支援も確立しておらず未だ地域福祉の担い手が持続的に活動する環境が整っているとは言い難い状況にある。
実際に地域福祉活動における財源の確保は、コミュニティワークやコミュニティオーガニゼーションの取り組みに相当するもので地域福祉を高める上で不可欠な要素であるが、社会福祉サービスが措置制度の下で提供されてきた経緯から、地域福祉に関する研究はソーシャルワークの技法などに関するものがほとんどで、地域福祉活動を支えるための財政基盤を強化しなければそれらの組織が社会的使命を達成できないことが十分に理解されてこなかった。一方で、デンマークをはじめとする北欧諸国では、日本の地域包括ケアに相当する「総合ケア」のなかに住民組織やNPOの財源確保と、行政による財源のバックアップが組み込まれ ていて、インフォーマルで持続的な地域福祉活動を実現している。
本研究では、地域福祉活動を行うための財源的基盤を形成するための仕組を北欧のモデルから考察して、わが国における地域福祉活動の財源確保のためのファンドレイジング(資金調達)のマネジメントモデルを構築することを目的としている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

近年の研究では、鶴巻(2021)らが東京、千葉、神奈川、埼玉県、茨城、栃木、群馬、長野の1,273のNPO法人を対象にして調査を実施し、地域主体の持続的まちづくり活動を行なっているNPO法人の組織運営上の課題のなかで「資金不足」を挙げている活動団体が最も多いことがわかった。これは、全国社会福祉協議会(2010年)の全国ボランティア活動実態調査で47%の団体が活動資金不足を課題としてあげている時から変わらない民間の地域福祉活動における長期的な課題になっていることがわかった。岩田(2019)のNPO法人の活動分野による収入構造によると、介護保険などの事業収入比率が高い法人に対して事業収入比率が低い法人は会費、寄付金、助成金の社会的支援に収入を依存する傾向がみられることから、住民組織による地域福祉活動の財源も社会的支援に依存することが示唆される。
今年度では、地域福祉が慈善活動として行われていた時代から現代社会におけるボランタリー的な主体的市民活動へと変化するなかで、活動を支える財源の確保がどのような変遷をたどっているのかを明らかにするために、民間の活動財源の変遷として特に我が国の寄付文化の概念とファンドレイジング(資金調達)の先行研究のレビューに取り組んだ。寄付白書(2017)によると今日の日本の寄付総額は諸外国に比べて低い水準にある。戦前の民間社会事業の財源は、寄付収入、恩賜金などが主であり財源が限られていた。戦後は社会福祉関連法により、措置委託制度と共同募金、民間助成団による助成金などが加わって1990年の福祉八法改正と2000年の社会福祉法改正によりNPOや住民組織などにも活動の財政的支援が行われるようになった。当該年度の目標の地域福祉活動財源の変遷に関する研究は概ね順調に進展しているが、社会的状況によりフィールド調査等の実施が難しい状況で研究全般としてやや遅れている。

Strategy for Future Research Activity

公的サービスだけでは解決できない地域の福祉課題解決のために多くの住民組織やNPOが活動しているが、その多くは活動資金の確保に苦慮している。社会福祉法では社会福祉の基本理念に地域福祉を掲げているにもかかわらず、地域福祉活動を支えるための財源の担保がなされていないことが背景にある。本研究では、地域の住民組織やボランティア団体が継続的に地域福祉活動を行うための財源的基盤を形成するためのファンドレイジングの仕組みづくりとマネジメントモデルを体系化することを目的としている。近年、欧米では、インフォーマルな日常生活支援の担い手を巻き込んだ「統合ケア」の仕組みがとられている。学術的観点で考えると、エスピン・アンデルセンの福祉レジーム論では、デンマークをはじめとする北欧諸国は「社会民主主義レジーム」に分類されており、租税を中心として公的機関が福祉サービスの全てを担っていると考えられがちであるが、すべての福祉課題を既成の公的サービスがカバーするのではなく、ボランティア団体が高齢者主体の地域活動を担っていることがわかっている。
当該研究のフィールドとして予定しているデンマークとフィンランドで、日本の地域包括ケアシステムに相当するケアシステムの日常生活支援の担い手である住民組織と自治体を対象とした活動資金確保のファンドレイジングの仕組みをインタビュー調査で明らかにしていく。主な調査内容は、住民ボランティア組織やNPOがその役割を遂行するためのファンドレイジングの構成要素を想定している。フィールドでの調査結果をもとに、地域福祉活動の財源確保のファンドレイジングの仮モデルの体系化を試み、日本で地域包括ケアの日常生活支援を行っているNPOを対象にヒアリングにより本研究で構築した仮説モデルの妥当性を検証する。

Causes of Carryover

該当年度は本研究の核となる地域でインフォーマルな福祉課題解決に取り組む団体を対象にヒアリングを行う予定であった。しかしながら、社会的状況により訪問調査等の実施が困難となったため研究手法を検討、変更しオンラインを活用した方法も試みたが、調査として信憑性のある結果を得ることが困難であったことから研究の手法を文献研究中心に切り替えた。フィールド調査が実施困難となったため、旅費、フィールド調査に伴うパソコン及びデータ解析ソフトの経費が未使用となった。
未使用となった経費は2022年度に国内およびデンマークでのフィールド調査の実施に合わせて、旅費、パソコン、データ解析ソフト等の経費として使用を予定している。社会的状況等により2022年度の研究計画の修正が必要となる際には、研究手法を検討、変更しながら経費を使用していく。

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Published: 2022-12-28  

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