2021 Fiscal Year Research-status Report
Historical Research on the Formation and Development of Academic Fields' Genealogy in Higher Education Institutions in Modern Japan
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21K02187
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 高聡 北海道大学, 大学文書館, 准教授 (90312420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 美穂子 北海道大学, 大学文書館, 特定専門職 (70455583)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 札幌農学校 / 技術者 / 田中義麿 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大のため、北海道外で予定していた資料調査を十分に実施できなかった。そのため、計画の手順の一部を変更し実施した。 研究代表者は、所属機関が所蔵する資料を中心に、札幌農学校開校から、しだいに学問分野の専門分化が進行していく時期の卒業生の動向を辿った。卒業生の多くが札幌農学校教員や北海道庁技師・技手となり、研究者・技術者として北海道「開拓」事業においてその専門性を発揮した。こうした専門性は札幌農学校在籍時に培っており、札幌農学校の専門学科構成、専門分化の方向性が、北海道「開拓」事業の進展経過と関わっていることが分かった。 研究分担者は、動物遺伝学者の先駆である田中義麿(1884-1972年)が綴った日記「未央手記」について、①札幌農学校予修科の在学時期(1903年9月~1905年8月)、②札幌農学校本科の在学時期(1905年9月~12月、1907年1月~8月)、③東北帝国大学農科大学の在学時期(1907年9月~1909年8月)、④東北帝国大学農科大学の在職時期(1909年9月~1916年12月)の4期にわけて翻刻・注釈作業を進めつつ、①の日記内容を教育環境・履修状況等に着目して分析した。札幌農学校予修科では、外国語(英語、ドイツ語)の習得に重点がおかれた学生生活が送られる一方で、田中義麿は八田三郎教授(動物発生学専門、学習院より札幌農学校に1904年10月着任)による「動物学」の講義・実験・参考書への関心の高さがうかがわれた。動物学研究への萌芽が札幌農学校予修科の在学時期に見られること、八田三郎教授からの学術系譜であることが確認された。 今後は、感染状況を鑑みながら、札幌農学校・東北帝国大学農科大学・北海道帝国大学の事例と比較検討が可能な高等教育機関の資料調査を実施し、研究対象と行論の幅を広げて研究を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は新型コロナウィルス感染症の感染拡大のため、他地方へ出張できる時期が非常に短く、予定していた資料調査を十分に実施することができなかった。その分を、所属研究機関が所蔵する資料を中心に、デジタル利用のできる資料や手に入れることができる文献等の活用により研究課題を遂行した。 研究代表者は当該年度で学会において招待報告を行なった。その報告内容は次年度の学会誌に掲載することが決まっている。研究分担者は、近代日本の動物遺伝学の歴史をたどる科学史資料のひとつである田中義麿の日記「未央手記」(1903~1916年)の翻刻作業を進め、札幌農学校予修科の在学時期の日記内容について、当該年度でその分析結果を論文として作成し、所属機関の紀要に掲載した。札幌農学校予修科及び本科の在学時期の日記については翻刻作業が完了し、補訂・注釈作業を進めている状況である。以上により、課題設定と計画にある程度沿った成果を上げており、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、資料調査実施の可否により、当初の研究計画の内容の比重を改めたり、範囲を再設定する必要が生じる。感染状況により、北海道外への資料調査に支障が生じる場合は、研究計画の内容を札幌農学校・東北帝国大学農科大学・北海道帝国大学に引き付け、入手可能な資料により他の高等教育機関との比較を実施する研究方法を取る。また、台湾への渡航と伴う資料調査が不可能な場合には、台北帝国大学等への言及を参考程度に止める判断も必要となる。感染状況を見極めつつ、最大限可能な資料調査を効果的に行ない、研究対象を広げるように努める。 また、現在進行中の田中義麿(蚕学・細胞遺伝学)の旧蔵資料を対象とした整理・翻刻・分析研究のほかに、(1)宮部金吾(植物病理学)、(2)半澤洵(応用菌学)、(3)星野勇三(園芸学)、(4)木原均(植物遺伝学)、(5)犬飼哲夫(動物学)、(6)牧野佐二郎(動物遺伝学)が旧蔵した科学史資料の整理・保存・活用の事例的研究を行う。これらの研究も、順次、所属機関所蔵の資料を中心に行いつつ、可能な限り他機関所蔵資料の調査・参照を進めることとする。なお、田中義麿が綴った日記「未央手記」の翻刻全文・補注の公開については、所属機関の叢書等により実施するように努める。
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Research Products
(4 results)