2021 Fiscal Year Research-status Report
学校で教員が育つには -教員評価システム、管理職の役割、研修のあり方の観点から-
Project/Area Number |
21K02207
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
杉浦 健 近畿大学, 教職教育部, 教授 (30298989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 英二 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (30071278)
松浦 善満 大阪千代田短期大学, 幼児教育科, 教授 (40243365)
湯峯 裕 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 教授 (50300984)
大前 哲彦 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (60097954)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教員評価 / ケアする学校 / 学校づくり / 教員研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
「学校で教員が育つには -教員評価システム、管理職の役割、研修のあり方の観点から-」をテーマに研究を進めています。本年度は、コロナ感染症の影響もあり、調査が十分にできなかったこともあり、理論的研究と研究会による意見交換を中心に行いました。ここで問題になったのはそもそも教員が育つということはどういうことなのかについてであり、その問題を教職の専門性と専門職性から理論的に考えていきました。 その一方で、教員が育つ学校がどのようなものであるのかについて、近年、少しずつその概念が生まれつつある、「ケアする学校」という観点から、研究会において考察をはじめています。 例えば、教員が学校をしっかり規律のある場所にしないといけないと考えることで、それ自体は学校の安心・安全のために必要なことでありながら、規律のためにはみ出る者を認めず(例えばゼロトレランス)、その者自身にとって学校が自分を排除する存在、そこにいて安心・安全のない場所になってしまうということがあります。 このような例から、心理的安全性の保たれた学校がすべての子どもたちが育つために、今後求められるのではないかと考えています。またそんな心理的安全性の保たれた学校のためには、まずは教員が守られていないと「ケアする学校」にはなりにくいのではないかと考えています。 これからの調査ではこのような仮説も念頭に置きながら、実際に子どもたちと接している教員や管理職が「学校とはどんな場所なのか」ということについてどのように考えているのか、そしてどう学校のあり方を変えようとしているのかを調べていこうと考えています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大きく2つの理由で遅れている。ひとつ目は、理論的考察および仮説の構築に時間がかかったためである。特に、コロナ感染症の影響で大きく変わった学校のあり方と、教員の専門性、専門職性(すなわち、学校や教員の果たす役割とは何か、そしてそのために必要な専門性、専門職性とは何か)との理論的関連性の解釈に時間がかかったためである。特に学校におけるケア的機能を教員がどのように果たすかについて、共同研究者間でも意見が分かれた。 ふたつ目は、コロナ感染症まん延のため調査研究に出向くことができなかったためである。理論的な議論の遅れから、仮説を十分に立てることができなかったこともあり、積極的に学校に入って調査を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の前に、2018年から2021年にかけて本研究者たちが行った「教員評価システム」の問題は、その評価基準のあいまいさに加えて、そのシステム自体が教員をケアするシステムになっていないことであった。もともと教員の評価・「育成システム」であるにもかかわらず、評価することがケアすべき教員に対してマイナスに働き、育成を妨げるというシステム自体に自己矛盾があるということである。 今後、この教員評価の問題も絡めながら、教員が本当に育つ学校のあり方を明らかにしていきたいと考えている。今後の方向性だが、今いろいろな意味で学校のあり方が問い直され、新しい学校のあり方が模索されている。特にこれまでの学校の機能として考えられてきた学力の形成と自治活動に加えて、ケアの重要性が指摘され、「ケアする学校」という考え方が浸透してきている。 この場合のケアとは、子どもの貧困や学習障害や発達障害、生きづらさを抱えた子供などに対する支援の機能である。このように学校の機能やあり方が変わってくると、教員の専門性、専門職性も変わってこざるを得ない。実は研究会内で論争があったのもこの部分であり、教員はその教科の専門家であるはずであり、そもそもケアは教員の仕事なのかということであった。 今後の研究としては、様々な意味で新しいあり方を模索する学校を調査する。仮説として、そのような学校がケアの機能を重視しているのではないか、さらにはケアは基本的には子どもをケアするという意味だが、そういう学校が教職員に対してどのようなケアを行っているのかを明らかにしたいと考えている。例えば、教員評価システムによる評価はしばしばケアと矛盾するが、そのシステムを援用してケアを行っている管理職などがいることがこれまでの調査で示唆されており、システムのケア的使い方を調べようと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症のため、学校現場への調査が行えなかったため。本年度はその分、現場への調査を多く計画している。
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