2021 Fiscal Year Research-status Report
近世末期の琉球におけることばの教育に関する基礎的研究―訓読と皇民化―
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21K02209
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
田場 裕規 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (80582147)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 六諭衍義大意 / 琉球語 / 訓読 / 科試 / 類推表記 / 書札礼 / 候文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「近世末期の琉球におけることばの教育に関する基礎的研究―訓読と皇民化―」と題し、『琉球板本六諭衍義大意』を主な対象として、①訓読法の受容の様態、②庶民教化とことばの教育、③訓読と皇民化について論究することを目的としている。また、琉球・沖縄におけることばの教育の歴史について、近世と近代を連続体としてとらえ、言語統制と国家主義、言語と国家、声と文化等についても補論することを目的としている。 2021年度は、琉球における「①訓読法の受容の様態」の基礎的調査を行った。その結果、(A)文之点の移入に関する史料・論文、(B)琉球の訓読資料に関する史料・論文、(C)琉球の仏教者に関する史料・論文から知見を得ることができた。また、琉球漢詩文の専門家や琉球史の専門家からインタビュー調査を行い、琉球における漢詩漢文に関する専門知見や、琉球の教育制度及び科試に関する専門知見を提供していただいた。 また、「②庶民教化とことばの教育」に関わって、近世琉球のことばの教育の系統を、諸資料を精査し、次の4つの系統があることを見出した。その系統を整理すると、琉球では、王府の役職(官生として中国に留学することも含む)と密接につながることばの教育が行われており、その内容は職務に必須な知識と言語能力の教習を目的としていた。近世末期の琉球におけることばの教育は、職能主義が徹底されており、王府への仕官を目標にことばの教育が行われていたことを見出した。それは、王府が役人を通じて行う統治と不可分な形でことばの教育が機能していたこともあらわしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大によって、当初予定していた調査出張がすべて中止にせざるを得なかった。ただし、専門知見の提供は、ZOOMなどWeb会議システムを利用することによって、数名の専門家からインタビューすることができた。学会発表は、かなわなかったが、紀要論文を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、『琉球板本六諭衍義大意』を主な対象として、①訓読法の受容の様態、②庶民教化とことばの教育、③訓読と皇民化について論究することを目的としており、2021年度は、①②について成果を見出した。しかし、①については、『琉球板本六諭衍義大意』以外の文献についても調査を進める必要があることが判明した。また、②については、資料収集が不十分であるため、引き続き調査を強化する必要がある。③については、①②を踏まえた論究になるので、次年度は、まず①②の調査を早めに進めていく必要がある。また、調査研究出張において、先行する程順則本『六諭衍義』に係る現地調査(中国福建省)を計画する必要があるが、新型コロナ感染症の感染予防に細心の注意を払う必要がある。適宜、大学当局のガイドラインに沿って取り組んでいく必要がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の感染拡大に伴い、大学当局のガイドラインに従って、予定されていた県外出張等の調査旅行を中止した。その為、予算執行の順番を入れ替え、図書購入を優先し、旅費・謝金の執行を制限したため、計画的な予算執行ができなかったため。
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