2023 Fiscal Year Annual Research Report
近世末期の琉球におけることばの教育に関する基礎的研究―訓読と皇民化―
| Project/Area Number |
21K02209
|
|---|
| Research Institution | Okinawa International University |
|---|
Principal Investigator |
田場 裕規 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (80582147)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
| Keywords | 六諭衍義大意 / 琉球語 / 訓読 / 科試 / 類推表記 / 書札礼 / 候文 / 会所 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『琉球板本六諭衍義大意』を主な対象として、①訓読法の受容と様態、②庶民教化とことばの教育、③訓読と皇民化について論究することを目的としている。また、①～③を総合した視点として。④琉球・沖縄におけることばの教育の歴史について、近世と近代を連続体としてとらえ、言語統制と国家主義、言語と国家、声と文化等についても補論することを目的としている。
2023年度は、②と③、④に関わって、第145回全国大学国語教育学会信州大会において、「近世琉球のことばの教育考」と題して学界発表を行った。これまでの研究成果に加えて、向象賢の「羽地仕置」に触れ、これが近世琉球のことばの教育にどのような影響を与えたかについて考察を行った。さらに玉城朝薫と組踊に触れ、「羽地仕置」以降のヤマト化が進められる中、玉城朝薫の出世過程を見たとき、朝薫の出世過程は、琉球王府の昇任システムのモデルが生成されたことに言及した。玉城朝薫の出世のスピードは異例ともいえ、近世琉球の役人の出世栄達の道筋ともいうべき理想的なモデルとして受け止められていた。「羽地仕置」による本土の文化の奨励に後押しされて、玉城朝薫の来歴は、近世琉球のことばの教育に関する到達すべき評価指標を示したと結論づけた。
また、②③④に関わる研究に付随する考察を進める中、琉球沖縄歴史学会から例会への招待があった。2023年8月例会合評会において、鈴木耕太著『組踊の歴史と研究―組踊本の校合から見えるもの』を書評した。「鈴木耕太著『組踊の歴史と研究―組踊本の校合から見えるもの』を読む―人文学としての「組踊」の射程と方法―」と題して発表し、今後『琉球沖縄歴史』誌（2024年刊行予定、第6号）に掲載される。
1名のアルバイトによって、『琉球王代文献集』内の『遺老説伝』（謄写版）のテキスト化作業を行った。ほぼ完了した状態である。
|
