2021 Fiscal Year Research-status Report
主体的エンパワメントの可視化:多様な声と場所をめぐる外国人生徒との批判的実践研究
Project/Area Number |
21K02280
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 聡子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (90737701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 綾子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (20720030)
徳永 智子 筑波大学, 人間系, 助教 (60751287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 居場所 / 外国につながる子ども / 参加型アクションリサーチ / 批判的実践研究 / エージェンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トランスナショナルな状況下で国家間を移動する子ども達が、調査者とともに、自分の置かれている環境や状況についてアクティブな行為主体(エージェンシー)として認識することを通して、アイデンティティや居場所について捉え直し、「主体的エンパワメント」につなげていくのかを可視化させる批判的実践研究である。初年度である2021年は、コロナ禍で海外調査はままならなかったが、研究実績は以下の2点である。 第一に、11月と3月に高校受験を控える外国につながる生徒たちと既に高校に進学した生徒ら10名とカメラやイメージマップを使ったワークショップを実施した。11月は歴史博物館へのフィールド調査、自らのルーツや生活・興味に関わるモノや場所の写真をポラロイドカメラでおさめ、それらをポスター上に整理し、タイトルをつけて共有し合いながら、故郷や今の生活環境に関する認識を内省・表象した。また、受験を終えた3月にも一年を振り返り、今後を想像することをテーマに、前回と同様にカメラやポスター上にイメージを可視化するワークショップをおこなった。子どもたち自身が「やり方」に慣れていき、子ども達との研究基盤の形成ができた。 第二に、文献調査を進め、共同研究者間での定期研究会を合計7回実施した。研究会では関連書籍の輪読をしながら、ワークショップの企画や振り返りをした。これらを通して異なる分野に依拠する共同研究者らのテーマに関する共通理解を深められ、次年度以降の展開についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、コロナ禍であったことからまずは共同研究者間での研究会を月に一回程度設け、本研究に重要な論文を読み、議論を重ねた。令和3年度は、若者参加型アクションリサーチ(YPAR) の実践研究を事例とする文献調査、国内及び北南米YPAR研究者らへの聞き取りを多少行なうことができたが、コロナ禍で、YPAR実践の場の訪問・観察は実施できなかった。 10月以降、少しコロナの状況が緩和されてきたため、高校進学を目指して日本語を学ぶ子ども達と高校在学中の生徒ら合わせて10名程度と、パイロット的にワークショップを2回実施した。11月は、歴史博物館でのフィールド調査から、自分たちが捉えたホームや今の生活環境やコミュニティについて、写真を撮り、それを媒体に千葉大学生と共に話し合いをした。また、3月にも同様にカメラを用いたワークショップを行った。 今年度前半は文献調査が主になったものの、後半には着実に子ども達とのラポールを形成し、次年度に向けて具体的な調査を進めていく基盤ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、コロナの状況が緩和されれば、国内及び北南米YPAR研究者らへのインタビュー調査、YPAR実践の場の訪問・観察を実施する。また、引き続き研究参加者の子ども達と共にワークショップを重ね、データを収集し、その分析を進めていく。そこから、異なるYPAR研究の場での相違点の背後にある社会的要因や構造、今後のYPAR研究の展開の可能性及び課題を、協力者である北南米のYPAR研究者からフィードバックを受けつつ検討し、途中成果の発表を目指す。
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Causes of Carryover |
令和3年度はコロナ禍により海外調査及び国内の調査も限られていたことから、ほぼ旅費を使用しなかった。令和4年度は国内外の移動についての規制緩和がなされれば、当初予定していた海外調査及び国内でのデータ収集についても積極的に進めていくため、繰越の予算を使用する。また、国内のデータ収集ではワークショップを実施するが、それが進むに伴い、人件費、物品費も使用していく。
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