2021 Fiscal Year Research-status Report
保育所最低基準の保育労働への影響に関する実証研究-複数地域の事例に基づいて-
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21K02361
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
小尾 晴美 中央大学, 経済学部, 助教 (70781475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓑輪 明子 名城大学, 経済学部, 准教授 (10613507)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 保育士の労働環境 / 人事・労務管理 / 労働時間 / 保育所最低基準 / 保育政策 / 処遇改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育士の勤務時間を中心にその勤務実態を明らかにし、保育所に求められている役割に対して、現状の最低基準の保育士配置基準が適切に応えられているかどうかについて検討することである。 1年目である2021年度の課題は、①保育の最低基準および私立認可保育所に対する運営費補助金制度に関する資料収集と分析、②私立認可保育所の勤務時間ならびに時間帯ごとの人員配置に関する資料収集と分析(予備調査)である。以上について、まず、対象自治体の保育士配置・加配に関する制度、賃金の補助(人員の加配と、賃金の上乗せ補助)、自治体レベルの待機児童等、地域の人口・産業の特徴、などについて、各自治体の情報を整理・収集する作業に取り組んだ。特に、国の最低基準以上の保育士配置に関する制度については、自治体ごとに独自の要綱を設けており、当該資料をそろえる必要があるため、すべての自治体に共通する項目を作成し、どのような資料を入手する必要があるかの整理作業を実施した。兵庫県および尼崎市では資料調査を現地で行い、要綱や関連する行政資料の収集を終え、愛知県および名古屋市では一部要綱や関連する行政資料の収集を終えている。 さらに、兵庫県と愛知県の保育所の理事長・事務担当者にそれぞれの自治体における制度の種類と特徴、ならびに保育所の児童定員(障碍児)、人員配置、年齢・雇用形態別職員数、賃金表や就業規則等について予備調査を実施した。なお、調査方法は、兵庫県の保育所では面接、愛知県の保育所ではオンラインの方法でインタビューを行った。 他方で、新型コロナウイルス感染症の流行状況から予定通りすべての地域での調査が遂行できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目である2021年度の課題は、①保育の最低基準および私立認可保育所に対する運営費補助金制度に関する資料収集と分析、②私立認可保育所の勤務時間ならびに時間帯ごとの人員配置に関する資料収集と分析(予備調査)であった。しかし、初年度は新型コロナウイルス感染症の流行状況から予定通りすべての地域での調査が遂行できなかった。とりわけ、2022年1月以降に予定していた札幌市・東京都内保育所への調査は、保育所における新型コロナウイルス感染症の流行とそれに伴う休園のため、実施することができなかった。調査先の体制上の困難なども重なったため、オンラインという方法をとることも困難であった。 本年度の最大の課題は、初年度に実施した予備調査を前提に、調査対象である複数の地域における保育園の管理職(園長、副園長、主任)、保育所内の実際の人員配置と、保育士の勤務シフトや子どもの利用時間の実態を照らし合わせるため、保育所におけるインタビュー調査を実施し、保育士の人員配置政策の課題について探ることである。初年度に実施した聞き取り調査は予備調査という位置づけであるため、施設によって領域の語りに偏りがある。そのため、初年度に予定していたデータを補うための資料収集ならびに聞き取り調査が今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である2022年度の課題は、対象とする保育所内の管理職(園長、副園長、主任)等、にインタビューを行い、採用や、人員配置が決定されるにあたっての管理者側の意図や、その時々の子どもへの保育内容がどれほど労働時間の決定要因として関連しているのかという背景を探る。また、聞き取りが管理者サイドのみになれば、労働時間等の実態が必ずしも正確には解明できないため、複数の保育士にもインタビューを実施する予定である。 しかし、新型コロナウイルス感染症が収まらない状態にあっては、当初計画していた対面でのインタビュー調査の実施は不透明である。まずは対象自治体の保育士配置・加配に関する制度、賃金の補助(人員の加配と、賃金の上乗せ補助)、自治体レベルの待機児童等、地域の人口・産業の特徴、などについて、各自治体の情報を整理・収集を継続し、分析を進める。 インタビューについては、法人理念やそれを実現する施設内での諸制度(受け入れ児童や職員配置、勤務シフト等)に関する情報を優先的に聞き取り、採用や、人員配置が決定されるにあたっての管理者側の意図について作業を進める。複数の保育士へのインタビューについては、実施方法について調査協力園と相談し、状況によってはオンライン等の方法を活用して調査を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度は保育所におけるインタビュー調査を実施し、保育士の人員配置政策の課題について探ることである。また、昨年度実施できなかった調査を補う必要があるため、実施の目途が立った場合には、補足の調査を実施したい。そのための旅費も必要である。調査の分析の際には、聞き取りの内容の文字起こしが必要であり、業務を委託する予定である。また、引き続き関係する政策・制度の資料収集を行う必要が生じるため、コピーや整理用のファイル等の費用を要する。
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