2023 Fiscal Year Research-status Report
社会系教科における概念型授業モデルの実用化研究―汎用的スキルの活用を踏まえて―
Project/Area Number |
21K02466
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山田 秀和 岡山大学, 教育学域, 教授 (50400122)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会科 / 社会系教科 / 概念 / 授業 / 汎用的スキル / 実用化 / 概念型授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,汎用的スキルの活用を踏まえて,社会系教科における概念型授業モデルの実用化の方法論を構築することにある。三年目にあたる本年度は,以下の取り組みを行った。 第一は,本研究に関連する文献等の収集である。これまでの年度で入手できていない文献や授業の事例集,最新の資料などを重点的に収集した。本年度は収集の幅を広げて地理教育に関する文献や情報も集めることができた。 第二は,概念型授業に関する原理的な考察である。本研究の重要用語となる概念と法則の性質を明確にし,それらの学習の重要性をあらためて考察した。また,これまでの概念・法則の学習とこれから求められる概念・法則の学習を対比的に検討した。社会系教科で重点的に扱う概念・法則と教科等横断的に発達を促していく概念・法則の体系を意識した教育の構想が今後必要であることを提起した。 第三は,教科教育全体を視野に入れた概念型授業に関する考察である。国語科との関係を事例にして,汎用的な言語スキルの教育の社会系教科への組み込み方を類型的に整理し,その授業構成やねらいとする資質・能力を一層明確にした。概念型授業のみを分析対象にしたわけではないが,この考察を基盤にして,教科の境界線や教科教育のあり方に踏み込む議論を提起した。 第四は,教員養成を視野に入れた概念型授業に関する考察である。研究当初の想定には入れていなかったが,概念型授業の実用化のためには,それを実践する教員の養成について研究することも必要となる。まだ着手したばかりであるが,本年度は,教職大学院の学生が概念型授業の「よさ」と課題にどのように向き合ったのかについて考察した。それを通して,学生と研究の場を結ぶことの重要性を提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概念型授業に関する原理的な考察や,教科教育全体及び教員養成を視野に入れた考察など,マクロな次元の研究を行えたことは本年度の成果である。一方で,本来予定していた発問や活動,資料,ワークシート等のミクロな分析を行うことができなかった。また,国内外の先進的な取り組みの調査も十分行うことができなかった。 「やや遅れている」という進捗状況の背景には,学内業務の多忙化がある。学部の教員養成カリキュラムが大きく変わり,本年度はそれに対応するための教育実習や関連授業を整備する役割を担うことになった。また,旧カリキュラムと新カリキュラムが同時並行で進行しているため,授業の準備等にも多くの時間をかけなければならなかった。そのため,本研究課題に集中して取り組む時間を確保できなかった。業務の効率をあげることで,時間確保に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画は以下の通りである。現実的に実行できることを想定し,これまでの計画を一部変更した。 第一に,引き続き事例分析を進め,概念型授業の多様な構成のしかたを引き出す。特に,問い,活動,資料,ワークシート等に至る授業の細部に着目し,概念型授業のミクロな構成原理を抽出していく。その際には,概念型授業を実践する教員の養成も考慮に入れて分析を試みる。 第二に,事例分析を踏まえて授業を開発し,実用性の観点から検討を行う。その際には,可能な限り,性質の異なる多様な授業の開発・検討を試みる。 第三に,本研究で得られた成果を整理し,体系化する。
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Causes of Carryover |
本年度は海外調査を計画していたが,日程が確保できなかったため実行できなかった。また,国内の調査も限られたものになった。そのため次年度使用額が生じた。 次年度は,引き続き文献調査を進めるとともに,海外や国内の先進的な取り組みを調査することで,事例分析を充実させる。また,小中高の実践者にも助言を仰ぎつつ,事例分析を踏まえた授業開発を行い,実用化の観点から検討を試みる。その上で,研究成果を学会や論文等で公表したい。以上を達成するための費用として助成金を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)