2023 Fiscal Year Research-status Report
地質図情報+ストリートビューを活用した教材開発と学習モデルの構築
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21K02566
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
川村 寿郎 宮城教育大学, 教育学部, 特任教授 (60186145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 隆之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (40466230)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地学教材 / 地質図情報 / ストリートビュー / 航空写真 / 地質事象 / 学習モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地質図情報とストリートビューを活用して、様々な地質事象に関する学習教材を開発し、理解を深める効果的な学習モデルを構築する。これにより,小・中学校理科や高等学校地学の学習内容において、広範囲の地質事象をより具現的にし,さらに主体的に観察して関心・理解を深めることを可能にする。 本年度は基礎研究として,昨年度の引き続き,日本全国のストリートビューの現地画像の中から、学習に適合する地質事象の抽出選定を行った。ストリートビュー画像と地質調査総合センターの地質図情報である「20万分の1日本シームレス地質図」および「地質図Navi」とを使用して,昨年度抽出した15項目の中視的規模の地質事象(地層の層理-成層,不整合,断層,褶曲,堆積構造,節理,堆積岩岩相,火成岩岩相,変成岩岩相,付加体岩相,火山地形,火山噴出物,岩脈,風化,化石)に加えて,2項目(侵食地形,堆積地形)の抽出選定を行った。それらを整理集約して,教材コンテンツを作成した。また,抽出した地質事象の実態と観察適地の可否を判断するために,仙台北部,松島~大船渡,三陸海岸,秩父の各地区で現地確認調査を行い,地質図情報との照合を行った。 実践研究として,ストリートビューと地質図情報を用いた学習プログラムを作成した。抽出した観察適地のストリートビューを用いて,学習事項にある地質事象を認識して理解する授業実践を行った。授業後に生徒へのアンケートや授業者へのヒアリング等を行い,生徒の関心・理解の程度と学習効果を分析して,ストリートビューの活用方法と授業の改善点などを検証した。 以上の結果を纏めた報告を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・学習に適合する地質事象の抽出選定作業としてこれまでに,航空写真から中-巨視的な地質事象8項目の約70カ所,ストリートビューから中視的な地質事象17項目の約290カ所を抽出した。これらを集約整理して,授業で利用可能と見られる教材コンテンツの第3版を作成した。その結果,中視的な地質事象では教材化に足る十分な画像が得られた一方で,中-微視的な地質事象の項目(化石,堆積構造,火山岩岩相など)の画像は少なく,依然として項目による大きな偏りがある。 ・抽出した地質事象の実態と観察適地の現地確認調査は,仙台~松島周辺,宮城県から岩手県の三陸海岸,秩父盆地の約10地点で行った。その結果,新たなストリートビュー画像の追加掲示により観察適地が増した反面,依然として画質不良による観察不適箇所や,地質図情報との照合不備の箇所が存在することが確認された。 ・ストリートビューを用いた学習プログラムとして,基礎研究で抽出した地質事象の中から,火山地形と火山噴出物,断層と褶曲,地層の重なりと堆積構造,地域の地層の成り立ちに関する学習プログラムを新たに5編作成した。前年度後半に火山噴出物と火山の特徴を学習する授業を実践して,受講生徒を対象としたアンケートを実施した。結果を分析するとともに,授業者の教員のヒアリングも加えて実践授業の検証を行った。その結果,8割を超える生徒から,興味・関心,利用に対する意欲・期待が示され,利用の有効性が確認できた。 ・基礎研究の一部と授業実践の結果を公表した。その中でストリートビューの中視的な地質事象204箇所を提示して授業での展開事例を紹介するとともに,授業実践の検証結果を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
・航空写真とストリートビューの画像から,学習に適合する地質事象の抽出選定作業を継続する。地質事象の項目を学習項目に沿って整理するとともに,各項目の適地を全国から抽出する。また,世界的な地質観察適地についてもさらに選定作業の追加を行う。それらを集約整理して,教材コンテンツの改訂版を作成する。 ・抽出選別した地質事象の現地調査を行い,画像や画質の良否や地質図情報との適合性に関する確認作業を継続する。 ・作成した教材コンテンツを用いた地学学習の授業実践を継続する。学習効果が高かった火山や地域地質の項目以外に,地質構造や各種岩石に関する学習の授業実践を行い,効果を検証する。 ・作成した教材コンテンツや学習プログラムについて教員研修会等を通じて紹介して.利用方法の普及を行う。
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Causes of Carryover |
川村(研究代表者)が2023年4月初めに病気のため約2週間入院し,その後の経過観察と体調回復で約3ヶ月間を要したことにより,資料収集の野外調査や教材作成作業ができなかった。また,コロナウィルス感染症の5類移行後も学校での自粛制限が続けられたため,当初計画した授業実践や教員研修などが実施できず,必要とされる物品の購入もできなかった。 次年度は,前年度予定していた野外調査と資料収集と教材作成を夏期~秋期,教員向け研修を夏期にそれぞれ行うために繰越経費を執行する。
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