2022 Fiscal Year Research-status Report
在日中国人を対象としたペアレント・トレーニングプログラム開発のための実証的研究
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21K02686
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
井上 菜穂 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (50748845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 雅彦 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252819)
中村 裕子 鳥取大学, 医学部, 助教 (60868496)
裴 虹 筑波大学, 人間系, 研究員 (70633915)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達障害 / ペアレント・トレーニング / 家族支援 / 在日中国人 / ASD |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では発達障害児の家族支援の1つの方法として多くのペアレント・トレーニング(以下、PT)に関する研究がなされ、その効果が示されてきている。特に、2016年の発達障害者支援法改正において発達障害者の家族支援の重要性が示され、厚生労働省は「発達障害児者及び家族等支援事業」において、発達障害児及びその家族に対する支援方法の一つにPTを挙げ、都道府県、市町村に対し、PTの実施及び支援スキル習得のための研修、実施者の養成を行うなど、PTの推進が行われてきた。その結果、PTは我が国において、発達障害への効果的な支援方法の1つとして認知されるようになった。その一方で、在日外国人の発達障害児への支援は著しく遅れており、本人支援やPTの未実施など課題が多い。現在我が国には307万余りの在留外国人がおり(2023年3月)、その中でも中国人は一番多く、76万人にのぼる。その中には、発達の遅れが疑われるものの親の言葉の問題によって子どもが医療機関へとつながらず、診断やサポートに至らないケースも多い。またたとえ受診につながったとしても、中国語に対応できる医療機関や療育施設や保育園が限られており、多くの親子が支援を受けることができていないのが現状である。中国人をはじめとして在日外国人の発達障害児への対応は、早急に取り組んでいかないといけない問題である。本研究では、これまで日本で開発してきたPTを改編し、中国文化等も考慮した「中国語版PTプログラム」を作成し、在日中国人で発達に問題を抱えている児の親を対象とした中国PTの実施およびその効果検討をおこなうことを目的としている。研究2年目の今年度は、中国人の親へのPTの実施をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は発達障害の親に対して一定の効果が証明された日本語のPTプログラム(井上,2013)をベースにプラットフォームや先行研究の知見をくわえ、さらには中国文化を配慮したPTプログラムの作成をおこなった。今年度はそのプログラムを中国人スタッフによって修正をおこない、それに中国語の自動音声読み上げをスライドに挿入した暫定版の中国PTを作成した。その後、発達障害の診断を受けている、または疑いがある児をもつ中国人の保護者を対象に、中国版PTを実施した。講座は全8回での実施で、4回が対面、4回がオンラインで実施した。今年度は日本人専門家がファシリテータをおこない、中国人専門家が同時通訳をおこなった。講座は講義とグループワークから構成されており、講義は自動音声で再生をしたのちに、補足を日本語でおこない、それを中国語に通訳した。グループワークは中国人スタッフを複数人配置することで同時通訳ができる体制を準備したが、日本語に訳するまでに若干の時差があり、グループワークの対応の難しさが課題となった。中国人参加者および中国人スタッフの満足度は高く、また参加者の子どもの改善も見られたことから、継続的なPTの実施が必要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の今年度は昨年度にモデルケースとして実施したPTの詳細な分析をおこなう。昨年度参加した親へアンケートに基づいた半構造化面接をおこなうことで、改善点を明らかにしたうえで最終版の中国PTを作成する予定である。その後、対象人数および対象年齢を増やして実施、効果検証をおこなう予定である。2年目は日本人専門家がファシリテータをおこない、中国人専門家が同時通訳することで対応をしていたものの、同時翻訳での課題も明らかになっていたが、3年目はGoogleピクセルの同時通訳機能を導入するなど、ITも同時に導入することでリアルタイム翻訳の課題へ対応できることを期待している。またグループワークを行う際にスタッフのスキル向上も求められるため、講座開始前のプレ研修として、中国人スタッフの研修をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響により、ペアレント・トレーニング開催の半分をオンライン実施にしたことや共同研究者が中国語翻訳に割くことができる時間が増大したこと、また予定していた国内学会がオンライン開催になったため現地での参加を見送ったことが影響している。次年度すぐ(5月および6月)の国際学会での研究発表の採択が決まっているため、次年度の使用を予定している。
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