2023 Fiscal Year Research-status Report
理論体系を視覚化する電子書籍とLMSを用いた深く学べる物理学習システムの構築
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21K02822
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Research Institution | Hiroshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
藤原 滋泰 広島商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20390495)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 物理教育 / 授業動画 / Teams / WebClass(LMS) / オンラインテスト / 電子書籍 / 体系的な理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、Teamsによる授業動画(予習・復習用)のグループチャットへの配信とWebClass(LMS)によるオンラインテストを組み合わせた学習システムの構築を推進した。年度末のアンケートや全国高専CBTの結果より、Teams配信の授業動画とWebClassのオンラインテスト、電子書籍等が理解に役立ったことが確認できた。具体的には、以下の3点を主軸として、深く学べる物理教育を推進した。 ① 予習・復習用の授業動画は、計64本(1年生用:5本、2年生用:34本、3年生用:25本)を各クラスのTeamsのグループチャットへ配信した。学生達には、授業の問題演習の時間に解答解説を視聴させて、個別のペースに合わせた答え合わせをさせた。また、試験勉強やインフルエンザ等での欠席の際にも授業動画を自習で活用させた。配信した全動画は、当校の藤原教員のホームページからも一般公開を開始した。 ② 個々の授業動画と一対一に対応するオンラインテスト55本(1年生用:5本、2年生用:26本、3年生用:24本)をWebClass(https://webclass.kosen-k.go.jp)上に設置した。テスト問題は、授業の演習プリントと同様の問題で構成した。Teamsのチャット配信の際に各動画と対応するオンラインテストの課題番号を明記することで、学習後の速やかな理解度チェックを誘導した。学生達には、満点を取れるまで繰り返すように指導し、定期試験の対策としても活用させた。 ③ 3年生に対しては、物理量や法則間の体系的な理解を深めさせる為に、微分積分を用いた力学の電子書籍を用いた学習も継続させた。また、1年生から3年生の学生達に、動画の投稿チャットに理解できたことや気が付いたことなどをコメントで返信させて、互いのコメントに「いいね」等のリアクションを付け合うことで、“相互的な学び”を深める教育も継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
授業動画は理論体系を掴み易いように工夫し、追加分(新規3本)を含めて計64本を配信した。各動画に対応する55本のオンラインテストもWebClass上に再構築した。 動画をTeamsで配信するだけではなく、全動画を令和6年5月より、当校の藤原教員のホームページ(http://www.hiroshima-cmt.ac.jp/faculty/ippan/007.htm)から、一般に向けて公開した。全動画の理論的な枠組みの要となる、「微分方程式としての運動方程式」についての動画も追加した。 令和6年2月に、2年生3クラスと3年生クラスAにてアンケートを実施した(回答103人)。Teamsで配信された動画が役立ったと回答した学生は、“強くそう思う”と“そう思う”の合計が約85.4%(計88名)であった。他人の動画視聴のコメントを読んで、学んだことや気付いたことがあったと回答した学生は、“強くそう思う”と“そう思う”の合計が約86.5%(計83名) であり、コメントの相互評価が学びに役立ったことが分かった。WebClassのオンラインテストで理解が深まったと回答した学生は、“強くそう思う”と“そう思う”の合計が約86.4%(計89名) であった。また、動画が役立った場面のトップ3は、①復習33%(71票)、②試験勉強32%(69票)、③授業中24%(52票)であった。 令和5年度の高専CBT試験(物理)では、3年生クラスAの正答率が約55.3%であり、全国高専の平均正答率(約52%)を約3.3%上回った。2年生3クラスの正答率は約49.2%であり、まだ2年生であるにも関わらず、全国高専の平均正答率(約52.3%)まで約3.1%にまで接近した。 以上のように、授業動画とオンラインテストを組み合わせた学習システムの構築が概ね順調に進捗し、アンケートやCBT等でも良好な結果を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和6年度は、深く学べる物理教育のシステムについて、実践的な検証を完成させる為に、以下の4つの研究方策を推進する。 ① 剛体のつり合いや電磁気についての授業動画とオンラインテストを追加して、学習システムの網羅する領域を拡張する。また、微分積分を用いた力学の電子書籍については、電気力や万有引力による位置エネルギーや膨張する気体がする仕事に対して、積分を用いた学習内容を追加する。そのことにより、微分積分を用いた力学の理論について、電気や熱の分野へも体系的な理解を広められるようにする。 ② 前年度に続いて、Teamsでの授業動画の配信の際に、対応するWebClassのオンラインテストの課題番号をチャットに明記することで、動画視聴後の理解度チェックを円滑に誘導する。更に、Teamsの授業動画の配信チャットへのコメントとリアクションの入力も継続させて、主体的かつ相互的な学びを強化する。引き続き、コメントやリアクションを参考にした、授業動画の改善にも取り組む。 ③ 過去3年分の実践結果を元に、微分積分と力学の学習領域を中心として、物理量や法則間を結び付けている微分や積分に対して、最終的な体系番号を割り振る。問題演習やオンラインテストの解答解説にも、体系番号の表示を導入する。オンラインテストの誤答分析も行い、体系番号を用いた誤答原因への学習の誘導と克服も行う。 ④ 引き続き、定期試験や高専機構のCBT(物理)の結果、アンケートなどの評価・解析も行う。特に、令和6年度の高専CBTでは、全学年全クラスで全国高専の平均正答率を上回れるように、本研究の「深く学べる物理教育のシステム」を有効に活用する。 以上の推進方策により、4年間のシステム開発と教育実践の結果として、どの様な教育効果があったのかを総括し、深く学べる物理教育の具体的な提言に結び付ける。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和5年度の旅費については、国際学会(ISATE 2023)に注力した為、1件に支出したのみであった。タブレット端末(iPad)やパソコン等の購入に際しては、年度毎の低価格化と高性能化、新製品の発売等を見込んで、初年度での全台数の一括購入から、年度毎の購入に計画を変更した。 (使用計画) 今年度の学会発表については、オンラインではない現地での講演発表を予定しており、旅費を支出する見込みである。タブレット端末や電子書籍(iBooks)・授業動画を開発するための各種の物品の購入等にも使用する。
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Remarks |
瀧口三千弘、藤野俊和、藤原滋泰:2023年度 日本機械学会教育賞「運動と振動に関する各種学習用教材の開発と書籍の出版」 https://www.jsme.or.jp/20240305/
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Research Products
(4 results)