2022 Fiscal Year Research-status Report
Building the integrated support system for test development
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21K02831
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 秀宗 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30342934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 清佳 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (00561036)
安永 和央 環太平洋大学, 次世代教育学部, 准教授 (80777665)
寺尾 尚大 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 助教 (70827055)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テスト / 心理尺度 / 問題作成 / ガイドライン / 項目分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,テストの作成・実施において測定の専門家が担う部分をWeb上のシステムとして構築し,教師等がそれを活用することにより,合理的で妥当なテストの作成・実施を可能にすることである。 2年目の2022年度は,まず,項目分析を実行するソフトウエアの改訂・改版作業を行った。従来は択一式選択問題しか扱えなかった回答形式を,複数選択式問題にも対応するように修正したソフトウエアを開発し,主に国内(日本語使用者)のユーザーに公開している。一方,海外のユーザーや日本語を得意としないユーザーにも対応するため,Webブラウザ上で英語表記で項目分析を実行するソフトウエアを作成し公開した。 次に,心理尺度作成ガイドラインの素案を作成し,学会で発表を行った。2021年度に作成したテスト問題作成ガイドライン,アンケート調査項目作成ガイドラインに続く,3つめのガイドラインである。心理的構成概念の測定にあたって心理尺度が用いられることが多いが,極端に項目数が少ないなど,不適切な心理尺度も見受けられる。そこで,心理尺度が備えるべき性質や作成手順等を踏まえ,「尺度の作成を始める前に(8項目)」「項目の作成・選定について(5項目)」「項目文の記述について(12項目)」「回答選択枝の作成について(6項目)」「項目作成後の他の専門家による確認について(4項目)」「予備調査の実施・確認について(5項目)」「本調査の実施・結果について(9項目)」「項目の最終決定について(7項目)」の合計56項目からなる心理尺度作成ガイドラインを策定した。予備調査および本調査を経て,項目の最終決定し尺度を完成させるまでを扱っているのが特長である。 この他,学校や教育委員会の先生方を対象とした,テスト作成に関するWebセミナーの講師を担当し,合理的で妥当なテストを作成・実施するための知識と技術の普及に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合理的で妥当なテストの作成・実施を支援するWeb上のシステムの構築にあたり,テスト問題作成ガイドライン,アンケート調査項目作成ガイドラインに加え,心理尺度作成ガイドラインの素案をまとめ学会で発表した。ガイドラインの開発は,これでひと通り完了したことになる。今後は改訂作業を進めていく予定である。 開発したガイドライン,テスト作成に関する疑問や基礎知識,さらに,項目分析等をまとめた「テスト研究」Webサイトの拡充整備を行った。これまで,研究室Webサイト内のページだったものを,研究室Webサイトから切り離し,ページ数を増やして閲覧しやすいサイトに作り替えた。また,項目応答理論(IRT)について解説するページを追加した。IRTは昨今広く知られるようになってきているが,一般にも分かりやすいように概要を簡潔にまとめたサイトはあまりなく,一般の方でも簡単に参照できるページとして開設した。実際,SNSで引用された例も確認されている(https://twitter.com/KITspeakee/status/1635718112762023936)。 本研究等で蓄積された,合理的で妥当なテストを作成・実施するための知識と技術について,学校や教育委員会の先生方を対象としたWebセミナーで講演し,普及に務めた。さらに,研究活動に注目した新聞取材を受け,STEAM教育の記事として掲載された(中日新聞https://www.chunichi.co.jp/article/532280)。 以上から,本年度の進捗状況について,おおむね順調に進行していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,心理尺度作成ガイドラインを作成した。しかし,ガイドラインの使用例は作成していなかった。アンケートや心理尺度は多くの職域・領域で利用されるものであり,ガイドラインのイメージをより具体的に把握できる使用例を提示することが望まれる。そこで,次年度以降の研究活動において,アンケー調査項目作成ガイドライン,心理尺度作成ガイドラインの使用例を作成し,学会やWeb等で広く公開することを検討している。 2022年度までに公表したガイドラインは素案であり,既存のガイドラインや,研究者自身によって実施された研究により得られた知見,また実際のテスト問題等を参考に,複数の専門家によってまとめられたものである。しかし,その有効性についての十分な検討はなされていない。今後の研究において,ガイドラインの有効性を検討し,精錬させていくことが求められる。 テストデータを分析する項目分析システムについて,現場の先生方のニーズには,分析結果を受験者の能力評価に活かすこともある。しかし,現時点のシステムでは,そのニーズに十分応えられていない。そのため,受験者の能力評価の指標を追加するなど,項目分析システムの改良を行う。 研究成果を公表するWebサイトをさらに拡充整備するとともに,成果を学会や学術誌等で公表し,テスト作成に関する技術やスキルをより広めて行くことも必要である。
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Causes of Carryover |
研究の当初計画では,研究成果を国際学会や国内学会の学術集会等で発表するための旅費を計上していたが,コロナ感染症の蔓延により,集会がオンライン開催となったため,渡航費用の支出が無くなった。また,調査参加者に対する謝金の提供を計画していたが,完全にボランティアで参加することを保証するため,謝金をなくしたことにより,謝金支出が減少した。 これらを受け,当初予定にはなかった研究分担者を3名追加し,研究体制を拡充することが可能となった。追加申請した研究分担者は,ガイドライン開発に主体的に関わった研究者であり,いずれも許可された。未使用となっている渡航費用及び研究者金を,研究分担者への研究予算配分に振り替え,さらに研究活動を拡充する予定である。
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Research Products
(7 results)