2021 Fiscal Year Research-status Report
ウィズ/ポスト・コロナの地域づくりのアクションリサーチ
Project/Area Number |
21K02962
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 素彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60271706)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域づくり / アクションリサーチ / ウィズ・コロナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウィズ/ポストコロナ状況における新たな地域づくりのあり方を、アクションリサーチを通じて明らかにすることにある。地域の活性化とは、共育関係(異質な者同士が互いに育て育てられる関係)が賦活している状態をいう。2021年度は、まず現地訪問を通じて、三重県尾鷲市向井地区における耕作放棄地の再活性化の活動を具体的な研究対象として選定した。この活動は、中部電力三田火力発電所の停止をきっかけに「鉄から土に」業態転換してスタートした向井地区の観光農園を中心に、尾鷲の地域づくりに関わっている住民、コロナ状況を利用してインターンとして長期滞在している学生、「ふるさと兼業」を通じてこの活動(通称「民プロジェクト」)に参加しているプロボノや学生らによるネットワーク型コミュニティにより展開されている。筆者もプロボノメンバーの一人として、現地での活動や週1回のオンラインミーティングに参加するなど、協同実践的に関わっている。 本年度の研究を通して明らかになったことは、次の通りである。(1)活動の主体であるネットワーク型コミュニティは、従来の地域づくりには見られなかったような多様性と可塑性を備えているように見える。その背景には、コロナ禍の苦境をみんなで乗り越えようという相互扶助の規範が形成されたこと、コロナ禍で様々な活動が制限されたことで生じた時間や労力をそのような活動に活かそうとする人々がいたことがあったと考えられる。(2)活動のプロセスについても、コロナ禍でオンライン会議が普及したことを背景に、現地コミュニティとオンラインコミュニティを連携させる仕組みが試行錯誤的に形成されていった。こうしたコロナ禍を契機とする新たな共育関係の特徴については、2022年度以降も引き続き検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・本研究では、当初、三重県尾鷲市と兵庫県伊丹市における2つの地域コミュニティを研究フィールドとして、研究を進める計画だった。そのうち尾鷲市については、具体的な研究フィールドを選定し、ウィズコロナ状況における共育関係の特徴やプロセスについて検討するなど、当初の計画通り順調に進捗している。 ・もう一つの研究フィールドは伊丹市の予定だったが、現在、その地域づくり活動の中心人物であるH氏を中心に三田市をフィールドとした地域づくり活動が展開されており、本研究もH氏との面談や関係者への面接調査を実施しているところである。 ・ただ、今年度は研究成果を公表するには至らなかった。 ・以上を総合的に判断するに、アクションリサーチ自体は概ね順調に進捗しているものの、研究課題全体の進捗としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)尾鷲市向井地区におけるアクションリサーチを継続する。2022年度も引き続き現地での活動や(オンライン)会議に参加しつつ、関係者へのインタビュー調査を実施し、ウィズコロナ状況における地域づくりの共育関係の形成プロセスやその特徴を検討する。 (2)三田市におけるフィールド研究も、H氏をはじめとする関係者と協同しつつ、進めていく。 (3)アクションリサーチに基づいて、共育関係の観点から新たな地域づくりの特徴を記述する理論モデルの検討を進める。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の影響で、研究フィールドへの出張が制限されたのと、関連学会もオンライン開催となったため、旅費の使用額が予定よりも少なくなった。今年度は、研究フィールドへの出張や成果発表のための学会参加で使用する予定である。
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