2021 Fiscal Year Research-status Report
子どもの幸福観の形成を支えるソーシャル・ネットワークに関する発達的研究
Project/Area Number |
21K02999
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
寺川 志奈子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (30249297)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 宣之 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (20270861)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ソーシャル・ネットワーク / 思春期 / 人間関係 / 心理的距離 / 重要な他者 / 幸福度 / 幸福観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の第1は,児童期・思春期の子どもにとって心理的な支えとなる人間関係(ソーシャル・ネットワーク)が今,どのような特徴を有するかを,発達的・包括的に明らかにすることである。“友だち親子”,第二反抗期の減少,友だちへの過剰な気遣い等が指摘される現代の思春期の子どもたちにおいても,重要な他者の“親から友だちへ”といった発達的な移行はみられるのか。また,現在のコロナ禍におけるステイホームやソーシャル・ディスタンスは,子どもたちの人間関係のあり方に大きく影響を及ぼしていることも考えられる。 初年度の2021年度は,第1段階の調査として,中学生1年生~3年生を89名を対象に,①親や友人と子ども自身との心理的距離を測る調査(心理的距離マップ),②「重要な他者」を場面別に選択する質問紙調査,を実施した。その結果,親や友だちに対する心理的距離は,幼少期においては母親に対する心理的距離が最も近かったが,中学生においては友だちに対する心理的距離が最も近くなり,幼少期から中学生にかけて,心理的距離の近さは親から友だちへと移行する発達的変化が示された。また,中学生が有するソーシャル・ネットワークについて検討すると,日常場面で生起しそうないずれの場面においても,重要な他者として,「学校の友だち」が最も多く選択された。一方,困ったことの相談や秘密の打ち明けといった状況によっては「母親」「父親」「他の人」が重要な機能を果たしていることが示された。また「ひとりがいい・誰にも相談しない」という選択も,特に中学3年生になると多く出現した。さらには,①の心理的距離マップで測定された心理的距離と,②の質問紙により捉えられたソーシャル・ネットワークとの間に関連がみられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度につながる第1段階の調査を実施し、結果を得ることができた。ただし、新型コロナウィルス感染拡大により、県外、国外(予定していたフィンランド)に出かけて、研究打ち合わせや予備調査を実施することができず、小規模な調査となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、調査対象を小学校高学年から中学生までにひろげ、調査の第2の目的である、子どもたちの幸福度、および幸福観と、その背景要因として考えられるソーシャル・ネットワークとの関連について検討していきたい。まずは、日本の小・中学生を対象に、幸福度及び幸福観について調査から捉え、発達的に検討する。さらに、得られた日本のデータをもとに、再来年度、フィンランドの子どもたちを対象とした調査につなげていく。幸福度が低い日本に対して、幸福度が高いフィンランドの子どもたちの幸福度、幸福観、及びそれらと関連すると考えられるソーシャル・ネットワークについて発達的に検討し、国際比較研究へと展開していく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、予定していた県外、国外への研究調査旅費が使えなかったため。次年度は、感染拡大状況等を鑑み、可能になれば、県外、国外への調査研究旅費として使用を予定している。
|
Research Products
(1 results)