2021 Fiscal Year Research-status Report
場の量子論と三次元トポロジーの相互作用から導出される不変量の恒等式の理解
Project/Area Number |
21K03242
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山口 祥司 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30534044)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ライデマイスタートーション / 穴あきトーラス束 / 三次元双曲多様体 / 消滅恒等式 / 特殊線形群 |
Outline of Annual Research Achievements |
円周上の穴あきトーラス束という三次元双曲多様体において、ライデマイスタートーションの消滅恒等式の新しい成立例を提示することができた。ライデマイスタートーションの消滅恒等式とは物理学の場の量子論から予想されている公式で、ある条件で指定されたライデマイスタートーションの値の集まりは逆数の和がゼロになるという内容である。ライデマイスタートーションの値の集まりを指定する条件は、ライデマイスタートーションの値を定める際に使用する多様体の基本群から特殊線形群SL(2;C)への準同型写像の選び方を制限する条件になっている。 当該年度では、円周上の穴あきトーラス束の中でもトンネル数が1という条件を満たす三次元双曲多様体のライデマイスタートーションの値を求める公式を穴あきトーラス束構造の特徴に注目して導出し、トンネル数が1の穴あきトーラス束のライデマイスタートーションの値を詳細に考察した。ライデマイスタートーションの値を詳細に考察したところ、多様体の基本群から特殊線形群SL(2;C)への準同型写像の集まりを定める多項式を利用しても同じ値が導出できることを発見し、証明を与えることができた。ライデマイスタートーションの値を多様体の基本群から特殊線形群SL(2;C)への準同型写像の集まりを定める多項式を利用しても導出できることの証明に当初は修正すべき部分があったが、消滅恒等式予想を提出した韓国の研究者Dongmin Gang氏, Seonhwa Kim氏および Seokbeom Yoon氏が企画したオンラインセミナーでの研究発表と意見交換を通じて、証明の検証と修正をすることができた。今回得られた基本群から特殊線形群SL(2;C)への準同型写像の集まりを定める多項式を利用してライデマイスタートーションの値を求める考察はテキサス大学ダラス校のAnh Tran氏と共同で進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
円周上の穴あきトーラス束におけるライデマイスタートーションの値を求める公式の導出は研究計画通りに実行することができた。多様体の基本群から特殊線形群SL(2;C)への準同型写像の集まりを定める多項式を利用してライデマイスタートーションの値を求める考察はテキサス大学ダラス校のAnh Tran氏と共同で進め、韓国の研究者Dongmin Gang氏, Seonhwa Kim氏および Seokbeom Yoon氏とのオンラインセミナーを通じて考察の中の修正すべき点を発見し、考察結果を修正した。また修正した考察結果の正しさを計算機を使った数値実験でも確認している。この修正により、当初必要と考えていた消滅恒等式の定式化を改良する計画に変更がでてきたが、消滅恒等式の新たな成立例を研究計画の申請時よりもより多く与えることができる見通しになったので、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ライデマイスタートーションの消滅恒等式の新たな成立例を研究計画の計画時よりも多く提示することができる見通しとなった。今後は計画よりも多くの対象でライデマイスタートーションの消滅恒等式が成り立つことの考察を、専門家との意見交換を通じて検証していく。対面またはオンラインでの研究発表や研究打ち合わせを通じて、当該年度に得られた研究成果について専門家と意見交換を行う。テキサス大学ダラス校の Anh Tran 氏と引き続き共同で考察を進めて研究計画を着実に推進する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で移動制限があったため、研究成果発表や研究打合せの旅費の使用を中止した。翌年分として請求する助成金は、移動制限が緩和された場合は当該年度の研究成果の研究発表や研究打合せのための旅費としての使用を計画している。また出張先での研究発表や研究打合せ時に計算機による数値実験を行うためのラップトップPCやソフトウェアの購入も計画している。 コロナウィルス感染対策で移動制限などが続く場合は、オンラインで研究発表や研究打ち合わせを円滑に行えるような環境整備に助成金を使用することを計画している。
|