Project/Area Number |
21K03520
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
畠山 力三 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 名誉教授 (00108474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
權 垠相 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10360538)
美齊津 文典 東北大学, 理学研究科, 教授 (20219611)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラズマ制御 / ナノダイヤモンド / グラフェン / 窒素ー空孔中心 / 先進機能性ナノカーボン |
Outline of Annual Research Achievements |
[1]NV中心(NVC)内蔵ナノダイヤ(NVC-ND)・グラフェン創製に向けて, カーボンナノリングを用いた絶縁体基板上への層数制御グラフェン合成の詳細実験を継続したが, 基板表面での不均一合成であることが判明したので, 触媒もシーズも用いない新たな代替プロセス手法の開発に着手した. [2]ここで, グラフェン層の土台となるナノダイヤモンド(ND)の微結晶サイズ(Ld)とグラフェン微結晶サイズ(Lg)の関係を重視し,バッキーダイヤモンドを超音波撹拌法で石英基板上に種付けし, C2H5OH/H2混合のM-プラズマ(RF)を用いてND薄膜合成の予備実験を行い, Ldが10 nmから1000 nmの範囲にあること突き止めた. [3]そこで, このND薄膜のLd値を認識し, グラフェンの層数とLgを制御可能なグラフェン合成プラズマCVD法を探求した. グラフェン構造・品質の評価はラマンスペクトルの欠陥(Id), その倍音(Io), グラファイト(Ig)の各バンド強度, それらの比Id/Ig, Io/Ig(Ro)及びIoの半値幅(Wh)を基に行った. C2H5OH/H2(7/1)混合のL-プラズマを用いてRFパワー(Prf), 基板温度(Tsb), CVD時間(Tc)への依存性を測定し, Tsb=700 ℃, Tc=60分の場合に以下の結果を得た. (1) Prf=20 W:単層(Ro=1.7, Wh=35 cm-1, Lg> 500 nm)及び数層(Ro=0.6, Wh=40 cm-1, Lg=275 nm). (2) Prf=30 W:単層(Ro=2.1, Wh=34 cm-1, Lg=44 nm)及び数層(Ro=0.6, Wh=58 cm-1, Lg=79 nm). (3) Prf>40 W:単層のみで極めて均一な薄膜(Ro=1.4, Wh=49 cm-1, Lg=16 nm).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(1)上記の研究実績概要で述べたように, NVC-ND・グラフェン創製に必須となる絶縁体基板上での層数及び微結晶サイズ(Lg)が制御されたグラフェン成長法の確立が初年度の昨年度には完了せず, 今年度に持ち越しになったことが遅れた進捗状況の主要因である.グラフェン成長のテンプレートとなる六員環ループのカーボンナノリングを用いた手法は基板表面での不均一合成であることが判明したので, 今年度には代わって平面状の六員環小ネットワークの多環芳香族炭化水素であるコロネンをシーズとしてその2次元拡張成長を期待したが, グラフェンまでの成長には至らなかった. また, 現在使用しているアルコールプラズマCVDではパラメータ選択によって酸化グラフェンが多量に合成されることが分かっていたので, これをシーズとして水素プラズマエッチング・還元効果によってグラフェンへの成長を試み, 実験を行ったがこれも成功には至らなかった. さらに, 金属触媒として知られている銅板の代わりに銅フォイルをプラズマCVD容器内で絶縁体基板から離れた場所に設置し, これを高温中のプラズマスパッタにより蒸気化させて気相中反応を促進してのグラフェン成長も実践したが, 基板上での高品質のグラフェン成長には至らなかった. (2)以上の実験過程を経て最後に辿り着いた戦略として, L-プラズマ(RF)において触媒もシーズも一切使用しないで, C2H5OH/H2混合比, Tsb, Tc, Prfを系統的に変えて, 絶縁体の石英基板上での高品質単層及び数層グラフェン合成のパラメータ領域を探索した. この実験に膨大な時間を費やしたことで遅れた研究進捗状況になった.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)M-プラズマ(RF)を用いたND薄膜合成の予備実験結果に基づいて, 本格的なND合成対応のH-プラズマ発生に向けて, 現有のRFプラズマ装置においてはアンテナ位置の変更後の装置整備を行い, 新製作のμ波プラズマ装置においてはその組み立てを完了する. 続いて, C2H5OH又はCH4/H2(多量)/N2(微量)の混合ガス・蒸気種から成るRF又はμ波放電による H-プラズマ(ne >1010 cm-3, Te > 5 eV)を生成・制御する. (2)N2を導入しない場合のこのH-プラズマを用いて, ”直径5 nmのバッキーダイヤモンド”が種付けされた絶縁体の石英ガラス基板上に, ナノクリスタルダイヤモンドを成長させ, そのND微結晶サイズ(Ld)の分布を精密に把握・測定する. (3)ここでN2を導入した後に, 基板(温度:Tsb = 900~1100 ℃)にRF電圧を印加し, 自己バイアス電圧の調節 (Vsb =-10~-300 V) によりN2+の入射エネルギーを制御し, 成長中(後)のND内にNVCの効率的創出を図る. 次に, C2H5OH/H2(少量)/CO2(極微量) [CH4の場合:H2O(極微量)追加]に対し, L-プラズマ(ne > 107 cm-3, Te > 0.1 eV)を生成し, Tsb (= 400~800 ℃)及びプラズマ照射時間(Tc)調整により, グラフェン層数及びLgが制御されたNVC-ND・グラフェンを創製する. (4)上記サンプルをラマン散乱分光器, 電子スピン共鳴装置, 光ルミネンス測定装置等により構造解析を行い, NVCの存在・分布を検証しNVC-NDグラフェン創製を実証する. 更に, 4探針プローバや超伝導量子干渉素子等により諸特性を測定し, 磁気・温度検出, 光電変換, 光電子メモリ等の電気・磁気・光学的新規複合機能性を実証する.
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Causes of Carryover |
[次年度使用額が生じた状況・理由]: 上記「現在までの進捗状況:遅れている」項でも述べたように, 触媒もシーズも一切使用しないで, 絶縁体の石英基板上に層数及び微結晶サイズを制御して高品質グラフェンを合成すべく, L-プラズマ(RF)パラメータ領域の探索実験に多大な時間経過を費やす結果となった. 従って, 本来予定していたRFプラズマ装置の改造とμ波プラズマ発生装置の新製作によるNVC-ND合成実験が行うことができなくなったので, 物品費の使用額を繰り越しせざるを得なかった次第である. (2)[翌年度分請求助成金と合わせた使用計画]: 物品費については, 現有のRFプラズマ装置におけるアンテナ位置の変更等の装置改造・整備を行うために使用する. また, 新しいμ波プラズマ装置の製作完了のために, 架台・真空容器・電気/真空部品の購入費として使用する. 旅費については, コロナ禍の鎮静が確実視されているので, 対面での国内・国際諸会議出席のために使用する予定である.
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