2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03551
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
白水 徹也 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (10282716)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高次元時空 / ブラックホール / ペンローズ不等式 / 角運動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は正エネルギー定理の強い重力場への応用に焦点を絞り研究を行った。まず、正エネルギー定理を応用することで高次元の共形スカラー場を伴う静的解の唯一性定理に関する議論を行った。特に、光の閉じた円軌道からなる光子球面の外側の領域について時空が唯一に定まることを証明することに成功した。この解は光子球面内で特異であるものの、その外側では正則であり、そのような時空の領域の唯一性が証明できたこと予想外の結果である。一方、正エネルギー定理をブラックホール時空に応用したものとしてPenrose不等式がある。これはブラックホールの表面である事象の地平面の面積が、質量で決まるサイズで上から抑えられることに対応している。しかし、事象の地平面自体は観測可能でないため、2017年に私が共同研究者と観測可能な強い重力場の存在を反映する緩捕捉面を提案し、その面に対するPenrose不等式の類似のものを証明することに成功していた。本年度、その面を弱重力場を検知するものとして拡張し、重力検知面と命名し、それに対する面積不等式を示した。さらに、より現実的な設定を念頭に、角運動量、重力波、物質の面積不等式に与える影響について考察を行った。また、その不等式を巧みに利用することで、任意の物体のサイズには角運動量に比例し、質量に逆比例する下限を付けられることがわかった。この下限は、特に通常の天体に対しては、これまで得られていた下限よりも厳しい制限を与えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正エネルギー定理自体の研究には時間を要しているものの、その応用に関する研究が大いに進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
当面、正エネルギー定理の応用面で研究を遂行することで、正エネルギー定理自体の研究へのヒントを追求する。
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Research Products
(8 results)