2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03551
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
白水 徹也 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (10282716)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 正質量定理 / 加速膨張宇宙 / 無限遠方 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が提案した重力場を検知する面、すなわち重力検知面の高次元時空や加速膨張宇宙への拡張を行い、その面積に対して不等式が成り立つことを証明した。また、その面の存在と正質量定理との関係を明らかにすることに成功した。 重力検知面は空間の曲がり具合を平均曲率と呼ばれる幾何学量の動径方向の変化によって特徴づけられている。当初提案されたその面は4次元や漸近的に平坦な時空に限定されていた。そこで、面の定義の再検討を行い、加速膨張に対しても有効な重力検知面の提案を行い、面積不等式を証明した。具体的にはその上限値が宇宙の地平面の面積に比例することを示し、比例係数の重力検知面を特徴づけるパラメータへの具体的な依存性を調べた。さらに、興味深いことに重力検知面に対する判定条件がHawking質量と呼ばれる面上で定義された準局所質量の正定値性を保証していることを明らかにした。 平行して、この数年継続して行ってきた無限遠方近傍における時空構造の解析を光的測地線に対する無限遠方への到達定理としてまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力検知面は引力が存在する時空を特徴づけられるものとして当初導入された。重力は引力であることと関連して、重力検知面の定義はその性質が反映された形となっている。今年度は、この予想の正当性をGerochの準局所質量の正定値性を示すことによって実現できた。Geroch質量は遠方で時空全体の質量を与えることがある条件下で示されていることから、これは重力検知面と正質量定理との関係を明らかにすることができたことを意味する。この研究は、重力検知面の加速膨張宇宙への拡張を試みた際に2次的に得られたものである。加速膨張が正の宇宙定数によって引き起こされる場合に限定されているが、重力検知面に対する面積不等式の証明にも成功した。これを土台により一般的な加速膨張宇宙への拡張が可能となることが期待され、本研究目的に向かって着実に成果は発表できている。重力検知面が重要な役割を果たすことは当初想定していなかったが、結果から順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度行った宇宙定数によって引き起こされる重力検知面の考察を、より一般的な加速膨張宇宙への拡張を行う。重力検知面の定義自体の再考を迫られることも念頭に、すべての可能性を検討し、包括的な解析を行うことを目標とする。さらに、重力検知面に対する面積不等式、正質量定理との関係を解明する。重力理論への理論的制限について考察を行う。一連の研究はブラックホールの基礎研究に直結している。加速膨張宇宙におけるブラックホールの唯一性定理への洞察も行う。そのような時空に対して、唯一性に対する反例の存在が数値計算によって指摘されている。一方、強い条件を要請することによって唯一性が成り立つことも指摘されている。加速膨張宇宙においては、通常の引力と膨張宇宙による斥力とのきっ抗によりこのような現象が起こることが予想される。そこで、きっ抗するよな重力検知面を考察することにより、ブラックホールの唯一性についてさらなる知見を得ることを検討する。
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Research Products
(4 results)