2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of excited nuclear states by using double arm spectrometers
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21K03599
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 信之 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (80750778)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原子核物理実験 / 励起状態 / ハロー核 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核は宇宙における物質の生成過程を理解する上で最も基本的な要素の一つであり、その静的(核構造)および動的(核反応)な性質は、純粋な核物理学的興味からだけでなく、宇宙物理分野からの要請もあって盛んに研究されてきた。原子核は最も軽い陽子から、2016 年に国内で話題となった 113 番元素ニホニウム (113Nh) を含む超重核まで存在し、これまで118種の元素、約3000種の同位体核種が実験的に見つかっている。核種は陽子数 Z と中性子数 N の組み合わせで表され、さらに各原子核は 1 つの基底状態と複数の励起状態を持ち、各状態は励起エネルギー Ex で識別される。すなわち、原子核は Z, N, 及び Ex の 3 つの自由度を持ち、原子核の各状態は Z - N - Ex 空間上の 1 点で与えられる。 本研究では、研究代表者が考案した手法により、原子核の励起状態の半径を測定すること目的とする。これまで、核の反応研究は基底状態のみを対象としており、励起状態に対する反応を扱うことは出来なかった。これは、一般に励起状態の寿命がピコ秒からナノ秒程度と短いこと、さらに質量を用いて基底状態と弁別することが困難であることに起因する。しかし、本手法は核の励起状態に直接反応の手法を適用するものであり、これまで不可能とされてきた“原子核反応を用いた励起状態の構造研究”を可能にするものである。 本年度は双腕スペクトロメータのイオン光学について考察を行い、実験的手法の解析を行った。この基本的なアイディアに基づき、実際に我々が保有する双腕スペクトロメータ「グランドライデン」および「口径スペクトロメータ(LAS)」における実験の詳細設計を行なった。実験に必要な物品も購入を進めており、実験準備が進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験の詳細設計を行なった。実験手法の考察と共に、双腕スペクトロメータにおけるイオン光学の理論的考察を行なった。双腕スペクトロメータとしては、大阪大学核物理研究センター (RCNP) のグランドライデンスペクトロメータ (GR) と大立体角スペクトロメータ (LAS) を用いる。2 つのスペクトロメータは用途によって使い分けるために設計されたものであるが、近年では (p, 2p) 反応によって放出される2つの陽子を同時測定したり、ビーム位置のキャリブレーションをする目的で、2つ同時に運用することが増えてきている。本研究でも、これらのスペクトロメータを同時に運用するが、RCNPにおける加速器アップグレードに伴い、しばらく運用を停止していた。今年度に入り、スペクトロメタの再起動テストを行い、概ね順調に起動し、本研究が遂行可能であることが確認できた。 また、本研究は励起状態の半径測定を主眼に置いていたが、本手法について、反応研究を行なっている研究者や、核構造の研究を行なっている研究者と議論したところ、本手法の応用について進展があった。すなわち、半径測定だけでなく、ノックアウト反応、核子移行反応、さらには共鳴状態への遷移についても興味深いアイディアを得ることができた。これにより、本手法の重要性が一段と高まった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き実験で必要となる検出器の開発を行い、さらに、これらの検出器の動作テスト、および実験セットアップの詳細設計を行う。本研究の実証実験で対象とする状態は12Be の励起状態 12mBe(0+) である。12mBe(0+) は中性子分離エネルギーが 920 keV と弱束縛であり、中性子ハロー構造を持つ可能性がある。本手法を用いて半径を測定し、手法の実証を行うとともに、ハロー構造の有無を特定する。 実験では、シリコン検出器によるΔE-E測定によって粒子識別を行う予定であり、検出器の有感面積と収量についての計算を行った。さらに、前年度購入したデジタイザーを駆使し、波形弁別の手法を用いた粒子識別精度向上の研究も行う。これについては、データ収集系 (DAQ) の開発と、これを既存の DAQ に組み込むインターフェースの部分の開発が必要であり、これを行う。
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Causes of Carryover |
世界的なシリコン不足により、納品が遅れているものがり、それにより遅延が生じている。
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Research Products
(10 results)