2023 Fiscal Year Research-status Report
地殻起源磁場変動は応力磁気効果でどこまで説明できるのか
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21K03721
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 健一 京都大学, 防災研究所, 准教授 (20436588)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地磁気 / 応力 / 応力磁気効果 / 地震 / 界面導電現象 / 電磁誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
応力の変化に伴って磁性体の磁化が変化する現象(応力磁気効果)は、地中の応力変化と地磁気変化を結びつける主要メカニズムである。その存在は熱力学的考察から定性的には理解できるのだが、比例定数(応力磁化係数)が現実の地殻においてどの程度の値を持つのかはわかっていない。室内実験で得られる岩石試料の応力磁化係数は、現実に観測される地磁気の変化量を説明するには小さすぎることが先行研究で指摘されている。一方で、観測される地磁気変化には応力変化以外に起因するものも多く含まれており、実験値と観測値の不一致の原因は観測値に含まれる応力磁気効果起源の磁場変動量の過大評価による可能性もある。本研究では、中国の研究者と共同で、ガス貯留施設周辺で実施された地磁気観測記録の解析を行った。応力変化が既知であるという長所を生かして、従来行われていたよりも高い精度で観測値の中の応力起因成分を検出し、これを理論値と比較することで応力磁化係数の値の絞り込みを行った結果、実際の地殻の応力磁化係数は、やはり実験室で得られる値よりも1桁程度大きい可能性が高いことが示された。 能登半島北部では2020年ごろから群発地震活動が発生していたが、2023年5月にはM5を超える地震が発生した。また、2024年1月にはさらに大きなM7を超える地震も発生した。群発地震発生域の地下構造を調べることを目的として、同地震震央の近傍では地磁気・地電位観測が実施されており、この観測を実施していた研究者らと共同で同データの解析を開始した。 力学作用を電磁場変動に変換するメカニズムは他にも存在する。地震動に伴う電磁場変動の生成には界面導電現象が主要な役割を果たすことが知られており、それを記述する方程式も導かれているのだが、既存の方程式には、当然含まれるはずの地磁気の影響が含まれていないという問題があった。この欠点を解消する正確な方程式を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の主目的であった地殻の応力磁化係数の決定に関して、重要な成果を得て査読付き学術雑誌での発表にまで至ったので、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に発生した地震の際に得られた観測記録を用いて、研究目的をより高いレベルで達成できると考えたため、研究期間を、当初予定の3年から4年に延長した。研究は前年と同じ、すなわち、観測記録の解析と数値計算の比較を実施することで、観測と理論の一致・不一致を確認するという方針で進める予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度まで、コロナ禍により執行が大きく遅れた。その影響が2023年度も残り、かなりの残額が生じている。2024年度の研究内容は、別項に記載した通り、当初予定していなかった新しいデータに対する解析であり、必要な費用を本予算から適宜支出して執行する。
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