2021 Fiscal Year Research-status Report
切除術の手術用メスへの燃焼炎によるナノ結晶ダイヤモンド皮膜合成と切開性能評価
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21K03746
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
高橋 護 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90261651)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイヤモンド皮膜 / 材料加工・処理 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,切除術の手術用メスの表面の硬質化による強度,耐摩耗性,耐久性の向上ならびに鋭い切れ味を得るため,燃焼炎法によりナノ結晶ダイヤモンド皮膜を手術用メス材料上に直接合成し,皮膜の接合強度の評価を行う.さらに,実際に使用されている切除術の刃物表面に直接ナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を行い,合成後の手術用メスの切開性能の評価を行う. 本年度は,現有設備である燃焼炎法によりダイヤモンドを合成することが可能な実験装置を使用し,現在,切除術の手術用メスとして主に使用されているステンレス鋼基板上に燃焼炎によりダイヤモンド皮膜の合成を行った.ここで,現在までの先行研究において基板の表面形状がダイヤモンド皮膜の接合に影響を与えることがわかっている.そのため,ダイヤモンドを合成する前にステンレス鋼基板の前処理として基板表面のスクラッチング処理を施し,基板表面の粗さを変化させ合成を行った.さらに,申請者らは皮膜の表面温度を合成中に段階的に変化させる合成法を提案し,接合強度が高いダイヤモンドを合成してきた.そこで,この段階的に温度を変化させる方法を用いてステンレス鋼基板上にダイヤモンドの合成を行ったが,ステンレス鋼基板の特性上,合成温度のコントロールが上手く出来ず合成が難しかった.そこで,合成中における合成温度を一定として合成を行い,また,燃焼炎の白心から基板表面までの距離も合成中に一定として合成を行った.この際,合成後にステンレス鋼基板上に合成された皮膜が若干はく離してしまう現象が発生したが,皮膜を合成することが可能となった. また,合成された皮膜を走査型電子顕微鏡,ならびにX線回折装置により合成皮膜の特性評価を行い,ダイヤモンド皮膜が合成されていることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,現有設備である燃焼炎法によりダイヤモンドを合成することが可能な実験装置を使用し,ステンレス鋼基板上に燃焼炎によりダイヤモンド皮膜の合成を目的に実験を行った.ここで,ダイヤモンドを合成する前にステンレス鋼基板の前処理として基板表面のスクラッチング処理を施し,基板表面の粗さを変化させ合成を行った.また,皮膜の表面温度を合成中に一定としてステンレス鋼基板上にダイヤモンドの合成を行い,さらに,燃焼炎の白心から基板表面までの距離も一定として合成を行った.ここで,通常のアセチレン-酸素ガスを用い,現在までの研究で得られている合成条件を用い合成を行った.この際,合成後にステンレス鋼基板上に合成された皮膜が若干はく離してしまう現象が発生したが,皮膜を合成することが可能となった. ここで,合成された皮膜を走査型電子顕微鏡等によりその結晶形状等の特性評価,ならびにX線回折装置により合成皮膜の特性評価を行い,ダイヤモンド皮膜が合成されていることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,膜の表面温度を合成中に段階的に温度を変化させる方法を用いて,高純度アセチレン-酸素ガスに添加する窒素の流量,ならびにダイヤモンド結晶の成長速度をコントロールできる燃焼炎の白心から基板表面までの距離をさらに変化させ,ステンレス鋼基板上に,燃焼炎法によりはく離を抑制したナノ結晶ダイヤモンドが合成可能な最適値を求める. また,現有設備である引っかき試験装置を用いてナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したステンレス鋼基板の引っかき試験を行い,はく離が生じる限界荷重を測定する.ここで得られた限界荷重と引っかき痕からせん断応力を求め,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したステンレス鋼基板の接合強度を定量的に求める. 実際に使用されている手術用メスの形状に対して既存の現有設備では,手術用メス表面の周辺全体にダイヤモンド皮膜を施すことが難しい.そこで,全体にわたってナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施すために現有設備である実験装置に改良を行う.改良を行った実験装置を用いて,実際に使用されている手術用メスの表面全体に,これまで得られたダイヤモンド皮膜を合成可能な最適条件を用い,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を行う.
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Causes of Carryover |
残額が少額であり,使用が限定されてしまうため,翌年度分と合わせて使用する予定である.
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