2021 Fiscal Year Research-status Report
準大気圧アーク放電による材料プロセスの新展開:He誘起繊維状ナノ構造の高速形成
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21K04028
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
菊池 祐介 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00433326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 誠紀 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40725024)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 準大気圧ヘリウムアーク放電 / 繊維状ナノ構造 / タングステン / プラズマ表面処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガス圧力5 kPa下にて生成したヘリウム(He)アーク放電をタングステン(W)試料に照射し、W表面に繊維状ナノ構造を形成した。W試料と真空容器間にバイアス電圧(Vb)を印加することで,W試料への入射Heイオンエネルギー(Ei)を制御した。照射後の試料表面を観察すると,Vb = -22 VではW表面形状に変化がないが,Vb = -112 Vでは繊維状ナノ構造が成長した。また,Vb = -112 VではHeバブルがW繊維内部に存在することを試料の断面観察から確認した。炭素のスパッタリング率から実験的にEiを評価し,40~50 eV(Vb = -112 V時)と得られ,繊維状ナノ構造形成にEiが重要であることを示した。また,シース中のイオン・中性粒子間衝突を考慮した衝突性シースモデルを用いて解析的にEiの分布を求めたところ,繊維状ナノ構造の形成に必要な20 eV以上を有するHeイオンがW試料に照射されることを明らかにした。これらの成果はJournal of Applied Physics誌に査読付き学術論文として掲載された。
これまでに,Heイオン照射によるWのスパッタリング閾値(~150 eV)より低いEiの条件では,Eiが高いほうが繊維状ナノ構造の成長速度が速いことが知られている。そこで,Vb = -242 VにおいてHeプラズマ照射をしたところ,繊維状ナノ構造層の成長速度が速くなることが分かった。繊維状ナノ構造層の成長がスパッタリングを上回っていると考えられ,Eiが分布を有する高いガス圧力下の実験に特徴的な結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
W試料断面のFE-SEM観察から繊維状ナノ構造層の厚さとイオンフルーエンスの関係を調査するとともに,炭素のスパッタリング率から入射Heイオンエネルギーの実験的調査などの実験を推進することができた。また,これらの成果を学術論文や学会で発表することができた。さらに,深い負バイアス電圧をW試料に印加することで,より高速に繊維状ナノ構造を形成することが可能となり,学術的な意義とともに表面処理技術としても優れた成果が得られた。これらの結果から,計画通り研究を推進できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
深い負バイアス電圧印加時の繊維状ナノ構造層の厚さを測定し,繊維状ナノ構造層の成長速度を明らかにする。また,ガス圧力等を変化させて,繊維状ナノ構造形成の最適条件を明らかにする。さらに,繊維状ナノ構造が消失する高温(2000℃程度)にてHeアークプラズマを照射することで,W表面に数マイクロメートルサイズのHeバブル・ホール構造を形成する実験も行う。高温下においてもその構造を保持できるため,アークランプ電極の放熱表面構造としての適性も調査する。
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Causes of Carryover |
準大気圧ヘリウムアーク放電装置で得られた繊維状ナノ構造の光学放射率の分析について,低ガス圧プラズマ照射装置AIT-PID(山形大学)で得られた繊維状ナノ構造と同時に分析することで効率的に実施・比較することができる。それぞれの実験進捗状況を鑑み,W試料の費用,光学放射率分析費用を次年度に繰り越すことにした。
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Research Products
(6 results)