2022 Fiscal Year Research-status Report
統合陸域シミュレータによる陸域水循環シミュレーション:積雪過程に着目して
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21K04269
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新田 友子 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (50754652)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統合陸域シミュレータ / 陸モデル / 積雪・融雪過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候モデルによる将来の気候変動予測は、気候変動に関する政府間パネル第6次評価報告書にまとめられた最新の研究から産業界に至るまで幅広く利用されている。大気・海洋・陸から構成される気候モデルにおいて、陸モデルは大気モデルへ下部境界条件を提供し、土壌水分・積雪はメモリとしての役割を持つ。そのため、陸域過程を正確・詳細にモデル化することは、気候モデルの高度化・精緻化のために重要な課題のひとつである。本研究では、統合陸域シミュレータ(ILS)において、特に積雪過程に着目して改良を行い、陸域水循環シミュレーションの改善が気候モデルの精度向上に寄与するのかどうか明らかにすることを目的としている。 今年度は主に、積雪スキームの改良と、気候モデルMIROCの大気モデルとILSを結合したAGCM実験に取り組んだ。積雪スキームの改良に関しては、特に北方林地域の地表面アルベドのバイアス改善を目指し、積雪時の個葉のアルベドを計算するスキームを改良した。キャノピー上の積雪量と個葉のアルベドの非線形な関係を考慮できるよう改良した結果、積雪域の地表面アルベドのバイアスが全体として低減され、特に堆積期のバイアス改善が顕著であることが示された。 また、昨年度準備したCGCM実験よりも計算負荷が軽く、積雪の大気への影響を評価するには大気・陸域結合実験で十分と考えられることから、AGCM実験に向けた準備を進めた。ILSとMIROC大気モデルを、ILSの結合インターフェイスを通して結合し、大気モデルが計算する地表面の気象変数とILSが計算する地表面フラックス等の変数を交換しながら実験を行なった結果、20年間の計算が問題なく動作することを確認した。 国際的な陸モデルベンチマークプロジェクトの参加に関しては、フラックス観測のサイトを対象としたILS実験の結果を提出し、結果について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ILSの積雪スキーム改良とAGCM実験の準備を行なった。積雪時の個葉のアルベドに着目して改良を行い、新しいスキームを用いて陸域オフラインシミュレーションを行なった。改良前後のシミュレーション結果を比較したところ、積雪域で平均した地表面バイアスが改善し、特に期待していた北方林地域でバイアスの低減が見られた。AGCM実験についても準備を進め、問題なく動作することを確認した。最終年度の本実験に向けた準備は十分に整っており、全体としておおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、過去2年間準備を進めてきたILSを用いた数値実験の本実験を行うことを予定している。また、大気モデルと陸域モデルを汎用カプラを通して結合する仕組みは、陸モデルの複雑さに対応しやすいという利点を持つものの、これまでに採用された事例が少ないことから、国際的な陸モデル開発コミュニティと議論する必要性も感じている。そのため、陸モデルを開発している海外の機関を訪問することも検討している。
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Research Products
(5 results)