2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の視覚特性を考慮した空間の明るさ指標提案に関する研究
Project/Area Number |
21K04380
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 未佳 日本大学, 生産工学部, 准教授 (00409054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 空間の明るさ / タスク・アンビエント照明方式 / 高齢者 / 机上面照度 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者は瞳孔経が広がりにくい傾向があり、若齢者と比較して空間を暗く感じる傾向がある。一方で、白内障による水晶体の白濁により眼球内散乱が生じるため、指向性の強い光が入射する環境では、若齢者よりもまぶしく感じ、視認性も低下する。オフィスなど同じ空間を高齢者と若齢者で共有する場合、上記の視覚特性に配慮して、双方に適切な光環境を構築する必要があるが、定量的な指針を示すためのデータ収集が進んでいないため、本研究で実空間での評価実験を実施する。 今年度は、コロナウィルス感染症状況から、高齢者を対象とした被験者実験を見送り、若齢者のデータ収集を先行して行うこととした(高齢者データは次年度以降に実施)。空間は暗く瞳孔経が開きやすい状況で局所的に明るい環境を用意するため、タスク・アンビエント照明方式を対象とし、空間平均輝度とタスクの平均輝度のバリエーションを多く用意して実験を実施した。その結果、若齢者においては、タスクとアンビエントの輝度対比は、1.1~1.2程度が好ましいとする結果が示された。また、タスクが400(lx)を超えたあたりで、輝度対比にかかわらず、紙面に印刷された文章の読みやすさが「苦労せずに読める」以上の評価となることも確認できた。JIS Z 9125の照度基準では、750(lx)が設計推奨値となっており、これよりも低い照度でも若齢者にとっては視作業に支障がないことが明らかとなった。この結果を基に、高齢者のデータを取得し比較することで、双方にとって視的快適性の高い環境の提供につなげていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルスの状況もあり、高齢者のデータは取得できていないが、それと比較するための若齢者のデータは十分に取得できているため、研究の進行に影響を与えるほどではない。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの感染者の減少を鑑みながら、令和3年度に若齢者で実施したタスク・アンビエント照明方式における実験環境における評価実験を、高齢者を対象として実施して行く予定である。 また、一方で内装条件等を無彩色に限定して実施していたが、被験者より、低照度環境は木調など、温かみのあるテクスチャーとなるだけで印象が異なるなどの声がきかれたため、無彩色のみで構成された空間と有彩色をふくんで構成された空間における傾向の違いなどについても検討が進められればと検討している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の規制がかかり、様々な会議がオンラインとせざるを得なくなり、旅費の支出がなかったことや、実験室設営も、大人数での対応が必要となる様な条件を避けたため、小規模での実験環境にとどまり、当初の予定より差額が生じた。 令和4年度は、学会等の海外渡航が困難な状況であるため、旅費の支出は抑えられる可能性が高いが、前述したとおり、実験環境のバリェーションを増やす予定としているため、より汎用性の高い成果へつながるよう予算を執行していく予定である。
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