2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の視覚特性を考慮した空間の明るさ指標提案に関する研究
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21K04380
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 未佳 日本大学, 生産工学部, 教授 (00409054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 空間の明るさ / 算術平均輝度 / 要求レベル / 知覚レベル / レンジバイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に、若齢者の特性を把握するための実験を行い、空間の明るさの知覚レベルと要求レベルに関する基礎的データを取得した。2年次にあたる2022年度は、若齢者と比較すべく高齢者の実験を行う予定であったが、同様の研究領域における他の研究者より発表された論文で、好ましいとされる机上面照度の値は、提示される実験空間の影響を受けており、レンジバイアスの影響が否定できない傾向が示された。空間の明るさに限らず、グレアの評価等でもレンジバイアスの影響を報告する論文が発表されている。 これらの知見に基づくと、机上面照度と本研究で扱う空間の算術平均輝度との違いはあるものの、空間の明るさの要求レベルに影響を受ける可能性が大変高いと考えられたため、高齢者のデータを取得する前に、予定を変更してその影響の程度を把握すると共に、実験方法見直しの必要の有無を検討するため、実験を行った。 その結果、室中央で125lx~1000lxの空間を提示した場合は、最適な明るさとの回答者が750lxで最も多くなるのに対し、250lx~2000lxの空間提示では、1000lxが最も多くなり、要求レベルに変化が生じていることが確認された。高齢者への負担を考え、若齢者の実験条件のうち、限定した条件を高齢者に評価してもらう計画であったが、相互の相対的な比較を行う場合は、評価条件に差を持たせない方が望ましいと考えられる。また提示幅については、研究的な興味おいては、実際の空間で計画する明るさの範囲よりも広く設定することが多いが、提示範囲の上限が高いほど、適切な空間の明るさと解答する物理量が上昇してしまう傾向を踏まえ、現実に即した範囲での実験が必要と思われる。 また、知覚レベルを把握するための基準ボックスに関しても、調整手法を調整範囲がわかるスライダーと調整範囲を把握できないスクロールの2方法で比較すると、双方にズレが生じることが把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
若齢者と高齢者の空間の明るさの要求レベルと知覚レベルを把握し、比較する計画であったが、初年度にコロナ禍による影響で高齢者のデータが取得できなかったため、計画を変更して、若齢者のデータのみを優先して取得した。このため、高齢者の実験計画が遅れている。 上記に加えて、「研究実績の概要」に記載したとおり、他者の複数の研究論文で実験条件の提示範囲によるレンジバイアスの影響が示唆されており、空間の明るさの要求レベルもその影響がある可能性が出てきた。本研究の目的の1つである空間の明るさの要求レベルの把握には、実験を実施する前にその影響を検証し、その程度に応じた実験手法見直しの要不要を判断する必要がある。そこで、当初の予定には含まれていなかったものの、提示範囲と評価手法に関する実験を新たに追加することになった。本来の研究課題を達成するために必要な工程ではあるが、計画当初に予定していなかった事柄に対応したことで、進捗状況に遅れを生じているが、新たな知見を得ることが出来たため、その価値はあると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までの成果を踏まえ、2023年度は若齢者と高齢者の実験を並行して実施していく予定である。具体的には、提示範囲に関して、JISZ9125等を参照し、一般的な室内環境の照度範囲に基づくものへと整理し直して実施することとする。また、知覚レベルを取得する調整ボックスについても、2022年度の知見に基づき制作のし直しを図る。 なお、レンジバイアスに関する研究成果については、国際会議等での発表を予定しており、その際に、関連研究者との議論を踏まえ、どのように扱っていくべきか実験法の提案へもつなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による影響により、当初予定していた学会発表等がオンラインとなり、旅費の支出が生じなかったことと、高齢者を対象とした実験に予定していた被験者の謝金の支出も生じなかった事が主たる理由である。 次年度使用額については、当初予定していた高齢者を含む評価実験に使用すると共に、学会発表等がオンラインから対面に切り替わることで、成果発表に関する旅費として使用していく予定である。空間の明るさに関する領域ではCIEにおいてTCが立ち上がる可能性が高く、国際会議への対面での参加による関連研究者との調整が必須であるが、昨今の為替レートや社会情勢の影響で旅費及び参加費の高騰も生じているため、申請時に予定していた予算額では不足が生じる見込みである。次年度使用額を有効に活用して、研究成果の発信にも役立てる予定である。
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Research Products
(1 results)