2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of the effectiveness of open-plan type school buildings
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21K04402
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
伊藤 俊介 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (50339082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 啓幸 常葉大学, 教育学部, 教授 (30190234)
立花 美緒 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (50740255)
倉斗 綾子 千葉工業大学, 創造工学部, 准教授 (80381458)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学校建築 / オープンスペース / 利用頻度 / 環境評価 / 学級規模 / 木質化 |
Outline of Annual Research Achievements |
実態調査:オープンスペース(OS)型小学校のうち、東京都内の自治体を中心に施設視察・現状調査を行い、教員を対象にアンケート調査を実施して教室・OSの利用実態と環境評価について調べた。調査対象校のプランタイプを、廊下拡張型、凸型(廊下中央部のみOSとして拡張したタイプ)、ホール型(OSを独立した空間として設けたタイプ)に分類すると、廊下拡張型は利用頻度が高く、ホール型は利用用途のうち授業以外の活動の割合が高かった。OSへのアクセスのしやすさで比較すると、教室がOSに直接面するクラスの方が移動を要するクラスより利用頻度は高かった。これらより、教室前のOSの方が教室の延長として利用しやすく、学習だけでなく生活活動にも活用されるが、クラスの領域と感じられにくいOSは限定的に使われる傾向が確認された。 環境評価の面では、学級規模が36人以上の場合に教室を「狭すぎる」「混み合っている」と評価する割合が増加し、「集中できる」と評価する割合は減少した。また、児童に「居場所が必要」だと感じる割合も学級規模に伴い増加することから、児童の心理面にも影響があることが示唆された。教室内の木質化した壁面の数が多くなるほど「あたたかい」「落ち着く」と評価する割合が増え、木質化の効果も確認できた。 文献調査・理論検討: 1980年代から現在までのOS型学校建築のプラン分析を行った結果、廊下拡張型が常に多数を占めるが、1990年代に一度多様化して近年はホール型の割合が増えており、クラスあたりのOS面積が少ない事例が増加していることが分かった。使われ方に関しては1980・90年代と比較すると近年は学級単位での利用が増えていることを把握した。また、海外の事例におけるOS的な内部広場についてまとめた他、OS型学校建築の導入・普及過程についてTechnological transition理論を適用した解釈を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に挙げている、近年のOSの事例評価および過去の事例の時系列的評価の両項目について着手し、一定の成果をあげることができた。しかしながら、新型コロナウィルスの流行により施設視察・実地調査が難しく、本来調査を行いやすい時期(1学期末、2学期)には部外者(研究者)の訪問を自粛すべき情勢でもあったことから、調査活動を十分に行うことができなかった。そのため、アンケート調査と文献調査・理論検討の比重を増して研究を進めたが、観察により研究者が空間の利用実態を直接把握する種類の調査ができなかった点で、やや遅れていることは否定できない。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査からはOS型学校建築がプランタイプとして主流でありつつ、近年はOS・多目的スペースの面積縮小の傾向が見られることが明らかとなり、廊下拡張型においては幅員の狭いOSが増えていることも分かった。実態調査からはOSの利用とプランタイプの関連の基礎的知見を得た。これらを総合すると、学習・生活活動に実質的には活用しにくいOSが増加していること、OSの利用頻度が多いとは言えないことが課題として浮かび上がる。このことから、OSにどのようなニーズがあるかという従来の視点に加えて、OSの利用を抑制する要因は何か、計画・設計者の意図した用途外に副次的にどのような活用のされ方をしているかにも着目して今日的な意識・ニーズを把握しながら有効性・課題を検証することを目指す。 アンケート調査での環境評価からは、内装・木質化の影響が分かった他、学級規模について、36人以上と35人以下では後者の方が環境評価が高く、特にネガティブな評価が減少するとの興味深いデータが得られた。現在、学級規模の上限を35人とする政策が採用されたところだが、これにより環境評価が改善される一定の効果が見込めることを示唆するものである。これをふまえ、2022年度以降の調査では学級規模と環境評価や教室・OSの利用実態との関連をより詳細に分析し、学級の小規模化に対応した既存教室・OSの活用の可能性を検討することも一つのポイントとしたい。 現時点では新型コロナウィルスの流行は収束したとは言えないものの、社会活動に対する制限は解除されつつある。これを受けて、今年度は社会通念・研究倫理的に許容される範囲でより積極的に実地調査を実施できるように努力したい。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載したように、新型コロナウィルスの流行により施設視察・実地調査が予定通りに実施することができず、そのため旅費の支出がなかった。これに関連してデータ集計・分析等の人件費も発生しなかったため、次年度使用額が生じた。 今年度・次年度は調査活動が活発化できる見込みであり、執行年度は後ろ倒しになるが、計画した用途(調査・学会発表旅費、人件費)に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)