2023 Fiscal Year Research-status Report
火災時における片まひ者の避難安全を向上する建築計画の研究
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21K04447
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
村井 裕樹 日本福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30455563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 防火戸 / 片麻痺 / 避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の実績は次のとおりである。 (1)実験について:片麻痺者の麻痺側と戸の開き方の関係を分析するため、片麻痺者を被験者とした防火戸通行実験を2022年度に続き同様の内容で実施した。具体的には、被験者一人一人に対し、開け方「押し開け・引き開け」×蝶番位置「右蝶番・左蝶番」×取手「引き開け時の取手4種類(ケースハンドル、堀込引き手、トランクハンドル、縦手すり)」の全組み合わせで実験を行い、ビデオカメラを用いた動作撮影を実施した。 (2)分析について:片麻痺者が防火戸を通行する際(通行前後も含む)の動作解析を、ビデオ動画をもとに行った。当該年度は、防火戸通行避難に関して重要な2つの所要時間について分析した、①「戸に手が触れてから戸が動き始めるまでの所要時間」については、今回の分析範囲では、麻痺側と蝶番側との間に所要時間の明確な関係性は見られなかったが、すべての麻痺側と蝶番側において、所要時間が最も短かった取手は「縦型ハンドル」であり次いで「トランクハンドル」であった。さらに取手に触れる指先の動きを確認すると、「ケースハンドル」は掴む部分が回転するため、引く動作に入るまでに指の動きを安定させる必要があり、このことが動き始めまでの時間に影響していた。②「戸が動き始めてから胴体が戸枠を通過するまでの所要時間」については、麻痺側や蝶番測によらず、「縦型ハンドル」が最も短かかった。また実験時の歩行様態をみると、片麻痺者の中でも身体機能の低い人の場合、防火戸や取手を掴むことで身体の安定性を保っていることがあり(防火戸通行時は杖を使えないため)、「縦型ハンドル」はしっかりと掴むことができる利点がある。このことからも縦型ハンドルの有効性が示された。以上の分析をもとに、学会での口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に予定していた実験は、新型コロナウィルス感染症の影響により2022年度、2023年度への実施となったが、現在までの実験で当初計画していた必要となる被験者のデータを確保で、分析に関しても概ね計画通り進めることができた。また、分析についても、防火戸通行時の所要時間について分析を進めることができ、その結果、片麻痺者が使いやすい取手の種類と、逆に課題のある取手の種類についての基礎的知見が得られた。これらのことから、区分通りの進捗状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、所要時間の詳細分析と、歩行軌跡の分析を進める。前者では、防火戸通行前後を含む動作を細かく区切り、その動作ごとの所要時間を戸の押し引きや蝶番の左右配置との関係をふまえて分析を行う。後者では、動画解析ソフトを使用し、頭頂部の軌跡等を分析することで、防火戸前後に必要な空間領域について検討する。 当該年度に行った分析では、防火戸通行の所要時間について左右麻痺差が明確に現れなかったため、原因と今後の分析については、実験に関わったリハビリテーションセンターの医師とエンジニアのサポートを受けつつ分析することを計画する。
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Causes of Carryover |
これまで実験で得られたデータの分析を進めてきたが、更に詳細な分析の必要性が生じ、次年度への研究期間の延長を申請した。そのため追加分析の補助を依頼するための謝金や、その結果を基にした論文の学会発表への交通費の必要性が生じた。これらを理由として、次年度の使用額が生じることになった。
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