2022 Fiscal Year Research-status Report
イランの乾燥地帯における農業施設の建築構法および建築技術者の存在形態に関する研究
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21K04462
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
淺田 なつみ 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 研究員 (00837643)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イラン / 農業遺産 / 構法史 / 建築生産組織 / 文化遺産保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2022年9月に、イラン、ラザヴィー・ホラーサーン州を訪れ、現地調査を実施した。本研究においては初めての現地調査であったため、安全に調査を進めるための体制をつくるとともに、同地域の環境、集落、建築について全体的な把握を行うことを目標とした。現地では、以下の活動を行った。 ・州都マシュハド近郊の15集落を訪問し、気候や地形、水資源のあり方による集落の類型方法について今後の調査の見通しを得た。 ・ナシュティファンと近郊農村に所在する風車群の建築構法と近年の修理状況に関して調査を行った。 ・ナシュティファンにて、風車群の建設に関わる建築技術者に対してヒアリング調査を行った。 現地調査により、イランの垂直軸型風車のうち、最も良い状態で残っているナシュティファンの風車群において、垂直軸型風車の建築的特徴および、その建設や維持に関わってきた建築技術者の実態について概要を把握した。農業システムの変化により伝統的な農業施設が機能を失ってから約40年が経過し、既にその建築技術が途絶えつつあることがわかった。一方で、聞取り調査により、伝統的な農業システムが生きていた頃の農村における建築技術者の存在形態の一端が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回は、調査体制の確保や地勢の把握など、今後に向けた予備調査的位置付けであったが、東部の農村ナシュティファンの滞在中に、現地の研究協力者や地元関係者の協力を得て、調査対象建物の簡易な実測調査や技術者へのヒアリング調査を実施することができた。 ここから得た詳細情報をもとに、建築調査対象やヒアリング調査項目を再精査し、次回以降の調査に反映することとする。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、農村ナシュティファンの近郊集落に対象範囲を広げて風車群の建築構法と建築技術者の実態について現地調査を継続する予定である。
一方で、2022年度9月後半以降、女性のヒジャブ着用に反対するデモが過激化・拡大し、イラン国内において政情不安が発生した。現在、表面上は落ち着いているようであるが、今後の現地調査については、現地研究協力者と連絡をとりつつ、状況に応じて実施の可否を判断する。現地調査の実施が難しい場合は、現地研究協力者にデータの収集を依頼するなどの対応策を検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度分については全体として概ね予定通りの使用額となり、2021年度未使用額がほぼそのまま残額となる。2023年度は、計画通り、現地調査の実施を予定しており、残額分と合わせて、現地調査の旅費や通訳、研究協力謝金などに使用する予定である。
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