2021 Fiscal Year Research-status Report
「地域空間の物語性」を考慮したハザード情報表記の適切性評価に関する研究
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21K04612
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高田 知紀 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (60707892)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 古典のなかの災害記述 / わざわい |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、自然災害に関連する物語の収集およびその分類作業を行った。まず、古代における自然災害への人びとのインタレストとその対応を把握するために、日本の古典である風土記、日本書紀、続日本紀、日本後記、続日本後記の分析を行った。災害の種類についての記述の出現数は以下のとおりである。 風土記(地震・津波3件、土砂災害3件、暴風・台風6件、疫病2件)、日本書紀(地震・津波19件、豪雨・洪水15件、暴風・台風12件、疫病15件)、続日本紀(地震・津波61件、噴火1件、土砂災害1件、豪雨・洪水38件、暴風・台風48件、疫病83件)、日本後記(地震・津波81件、噴火3件、土砂災害6件、豪雨・洪水42件、暴風・台風18件、疫病46件)、続日本後記(地震・津波49件、噴火4件、豪雨・洪水26件、暴風・台風7件、疫病25件) これらの古典における災害の記述から、古代の人びとの詳細な災害リスクへのインタレスト、およびそのリスクへの対応方策を見出すことができた。特に古代の人びとは、災害リスクを「わざわい」として捉え、ハザード事象に備えるとともに、環境を整備し、自身のふるまいや行為規範を改めるという姿勢がみられる。また、これら古典の記述では、個別に特定できる地名も多く含まれている。したがって、現在におけるそれらの土地の地域防災においても、物語性をふまえた実践に向けて活用することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、研究計画に対しておおむね順調に研究を進めることができた。自然災害に関する物語のGISによる空間分析は実行できていないものの、妖怪伝承、現代怪談、および本研究のメインフィールドである和歌山県の説話に関する文献についても情報を整理し、分類している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は、文献調査をもとに収集した自然災害に関する物語の空間分布分析を行う。そのうえで、現在における災害リスクポテンシャルとの比較を行い、物語のなかに含まれる災害記述の地域防災における活用可能性を検討していく。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍による影響で、和歌山やその他の伝承地における現地調査の回数が計画より少なくなったため、旅費の使用額が少なくなった。2022年度は、新型コロナウィルスの状況および社会情勢をふまえて、現地調査の頻度を増やす予定である。
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