2022 Fiscal Year Research-status Report
ナノコンポジットの強化材/樹脂界面接合状態に関する電子論に基づく研究
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21K04678
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
屋山 巴 工学院大学, 先進工学部, 助教 (10741514)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノコンポジット / 第一原理計算 / 複合材料 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、カーボンナノチューブ(CNT)と樹脂からなる複合材料の機械的特性の発現機構の解明及び向上に向けて、微視的な理論計算手法を用いた解析を行っている。原子スケールで構築したCNTとエポキシ樹脂の界面モデルを用いて、第一原理計算のもとで系の電子状態を調べている。CNTはほかの物質との反応性が著しく低いため、複合化において樹脂との接着性が低いことから、機械的強度を高めることが困難となっている。これに対し、CNTとエポキシの界面接合において、科学的活性の高い点欠陥が重要な役割を果たすと考えてこれに注目している。欠陥のない完全なCNTでは樹脂との結合性が低いのに対し、点欠陥を有するCNTでは、欠陥近傍にエポキシ樹脂が強く結合することが明らかとなった。点欠陥が存在するCNTの強度は、完全なCNTに比べて低下するものの、エポキシ樹脂との化学結合を生じることにより強度が回復することが明らかとなった。すなわち、欠陥をうまく活用することにより、CNT本来の強度を保ちつつ界面接着性を向上させることができる可能性が示唆された。ここで点欠陥とは、CNTの炭素1原子が除去された状態を指し、化学結合に関与していた電子が一部不在となるために、対をなさない余剰電子が存在する状態となる。これに対し、エポキシ樹脂との結合により、系の価電子が過不足なく結合に与ることが強度の回復に寄与していると考えられる。この結果についてはInternational Symposium on Space Technology and Science(ISTS2023)にて報告予定である(accept済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNT樹脂からなる複合材料において、界面における点欠陥の役割の重要性を明らかにし、学会でも成果報告を行っている。機械材料においてこれまで検討が不十分であった微視的な観点からの研究によって、長らく問題となっている界面接着性についての知見が得られており、狙い通りに研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
古典分子動力学手法を併用することにより、分子数を増やしたより大きな系における界面モデルを構築、研究を進めている。これにより、様々な熱力学環境下(常温、高温、低温、真空などの環境条件)において典型的な界面構造を推定し、より界面接着性および機械的特性が高まる界面構造についての知見を蓄積する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費などが概算であるため差分が生じているが、予定通り研究に必要な費目を支出している。最終年度では、計算機使用料など従量課金となる予算に充てたく、申請研究に資する使用を予定している。
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