2022 Fiscal Year Research-status Report
マルチレーザ加工技術を用いた先進パワー半導体用ヒートシンクシステムの創成
Project/Area Number |
21K04709
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芹澤 久 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (20294134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄二 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (40422547)
中里 直史 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (70714864)
岸本 弘立 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (30397533)
塚本 雅裕 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (90273713)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レーザ加工 / 異材接合 / パワー半導体 / ヒートシンク / レーザ肉盛溶接 / 拡散接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次世代のパワー半導体として期待されているシリコンカーバイド(SiC)製パワー半導体の活用に向けて、-40度から300度までの温度変動環境下において、SiC半導体とヒートシンクとの間に、健全性ならびに冷却機能を保持する、新たな接合技術の開発を目的としている。 2022年度は、昨年度に実施した熱間等方圧加熱法(HIP : Hot Isostatic Pressing)を用いたα-SiC板と純タングステン薄膜との接合体作製試験結果に基づき、純タングステン薄膜への銅肉盛層形成試験を行うための、接合体作製を行った。接合体作製に用いたα-SiC板の厚さは、パワー半導体への利用を考慮して、昨年度の板厚の半分である1.0 mmとした。一方、純タングステン薄膜については、昨年度0.025 および1.0 mmの二種類で試験を行い、両者に大きな差が認められ、0.025 mmではシリコン原子が銅肉盛層中に拡散してしまう弊害が認められたため、0.1 mm厚さの純タングステン薄膜を用いて、健全な接合体が作製可能であることを明らかにした。 作製したα-SiC板/純タングステン薄膜接合体の純タングステン薄膜表面への銅肉盛層の形成には、昨年度に引き続き、複数の青色レーザを熱源とするマルチレーザ加工システムを用いた。昨年度に同定した連続的な銅肉盛層形成条件での、銅肉盛層の作製試験を行ったが、α-SiC板および純タングステン薄膜の板厚の違いが、マルチレーザ照射による接合体への昇温プロセスに大きく影響を及ぼし、その結果として、新たに銅肉盛層形成条件の探索が必要であることが分かった。そのため昨年度と同様、改めて青色レーザの出力およびマルチレーザ加工システムの移動速度を変化させた実験を行い、部分的ではあるが連続的な銅肉盛層が形成可能となる条件を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、昨年度に基礎的検討としてタングステン基材寸法の評価ならびにSiC基材へのタングステン薄膜接技術の開発を行い、2022年度以降に、SiC基材に接合したタングステン薄膜への連続的な銅肉盛層接合技術の確立を行う予定であった。 昨年度において、基材寸法(二次元平面寸法)の影響を受けることなく、熱間等方圧加熱法(HIP : Hot Isostatic Pressing)を用いて、α-SiC板と純タングステン薄膜とを接合可能であることを明らかにした。しかしながら、接合体への銅肉盛層形成過程に、接合体の板厚の影響が認められた。そこで、有限要素法による熱伝導解析を行い、純タングステン薄膜が0.025および1.0 mmにおけるレーザ加工プロセス中のα-SiC板への熱影響分布の違いを検討した。そして純タングステン薄膜の厚さが0.1 mmであれば、レーザ加工プロセス中にα-SiC板に及ぼされる熱影響が1.0 mmの同じ程度まで抑制可能ある結果が得られた。そこで、0.1 mm厚さの純タングステン薄膜と1.0 mm厚さのα-SiC板とをHIPにより固相拡散接合させた接合体を作製し、良好な接合体作製に成功した。 SiC基材を接合したタングステン薄膜への銅肉盛層形成については、昨年度、当初計画よりも1年前倒して着手し、連続的な肉盛層の形成が可能であることを明らかにした。しかしながら、2022年度に新たに作製した0.1 mm厚さの純タングステン薄膜を用いて作製した接合体については、新たな銅肉盛層形成条件の同定が必要であることが分かった。そして、昨年度に行ったレーザ出力ならびにレーザ加工システム移動速度に加えて、肉盛層形成のための銅粉体の供給速度も変化させることで、部分的ではあるが連続的な銅肉盛層が形成可能となる条件を見出すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度において、当初計画では2022年度に実施する予定であった、SiC基材に接合したタングステン薄膜への銅肉盛層の形成試験を実施し、連続的な銅肉盛層の形成に成功した。しかしながら、タングステン薄膜の厚さの影響も含め、最適な銅肉盛層の形成条件の同定にまでは至らず、有限要素法を用いた熱伝導解析を通じて、薄肉で肉盛層が形成可能な厚さとして、0.1 mmを決定した。しかしながら新たな0.1 mm厚さのタングステン薄膜を用いた接合体では、部分的に連続した肉盛層の形成しかできておらず、これまでのレーザ出力とレーザ加工システムの移動速度に加えて、銅肉盛層を形成するための銅粉体の供給速度も変化させる必要があることが分かった。そのため、銅粉体の供給速度の変化も考慮した、有限要素法による熱伝導解析を行い、最適な銅肉盛層形成条件の同定を図る。 そしてSiC基材への新たなヒートシンクシステムを構築するためには、連続的な銅肉盛層を並列に形成するとともに、加えて、肉盛層の厚さ方向への形成も必要となる。そのため、連続的な銅肉盛層の三次元的形成プロセスの確立を目指した実験を行うとともに、最適な条件の導出を目指し、有限要素法を用いた熱伝導解析も並行して行う。そして、三次元的な銅肉盛層の形成を目指す。 本研究の最終目標は、SiC製パワー半導体の実現に向けたヒートシンクシステムの開発であるため、銅肉盛層への銅製ヒートシンクシステムの拡散接合試験を実施するとともに、温度変動を与えた環境下での接合層の健全性を評価する予定である。加えて、ヒートシンクシステムとしての機能性評価のため、SiC基材への電気負荷による温度上昇環境下での冷却機能の評価も行う予定である。そして、こられのヒートシンクシステムの健全性および冷却機能の発現性を明らかにすることで、SiC製パワー半導体の活用に向けた指針の確立を目指す。
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