2022 Fiscal Year Research-status Report
消化管内でのフラボノイドの吸収代謝動態に及ぼす水溶性食物繊維の作用の解明
Project/Area Number |
21K05452
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岩井 邦久 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (80404812)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フラボノイド / ペクチン / 代謝 / 抱合体 / 胆汁 |
Outline of Annual Research Achievements |
野菜や果実に含まれるフラボノイドは健康に有益な機能性を持つが、体内への吸収性が低い。我々は、水溶性食物繊維のペクチンが代表的フラボノイドであるケルセチンの吸収を即時的に高めることを見出した。その作用機序を解明するため、フラボノイド吸収時の代謝・分解に及ぼす影響と、代謝物の再吸収における脱抱合に及ぼす影響を検討している。フラボノイドは種類が多いが、本研究では日本人が摂取する代表的なフラボノイドのケルセチン (たまねぎ), ダイジイン (大豆), (-)-エピカテキン (茶) を選択し、消化管内におけるフラボノイドの代謝・分解と再吸収に及ぼすペクチンの作用を分析することで吸収促進機序を解明することを目指している。 これまで、フラボノイドを経口投与したラットの胆汁, 尿等からグルクロン酸抱合体等の代謝物の混合物を調製し、消化管および内容物でin vitro代謝すると、抱合体がペクチンの存在によって脱抱合されやすいことが分かったが尿代謝物ではその現象が顕著ではなく、またフラボノイドおよび消化管の部位によって程度に差が見られた。また、ラットにフラボノイドを単回経口投与した時、ペクチンの有無による吸収の顕著な差は見られなかった。本研究では、ペクチンの吸収促進作用はフラボノイドの抱合代謝物の脱抱合にペクチンが影響していると推察しているが、ここまでの研究でそれは解明できていない。そこで、今後、フラボノイド抱合代謝物の消化管内におけるペクチンの有無による吸収および脱抱合体の生成や抱合代謝物を経口投与した時の門脈および抹消血中の抱合体および脱抱合体の濃度を測定する。これをフラボノイド投与時の濃度と比較するにより、ペクチンがフラボノイドの吸収・代謝のどこに関与しているのか、またフラボノイドの種類による差の有無を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外科処置ラットを予定通りに調達できない事情があり、抱合代謝物投与時の吸収や門脈血濃度の検討が予定ほど進まなかったため、やや遅延と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
フラボノイドの吸収時に関与するペクチンの作用について、フラボノイド未変化体をラット消化管に注入した時には吸収に差がなかったため、抱合代謝物をペクチンと混合して結紮部位に注入し、消化管からの吸収および抱合体の代謝に及ぼすペクチンの作用を分析する。 フラボノイドの再吸収におけるペクチンの作用を解明するため、ペクチンの有無によるフラボノイド抱合代謝物の脱抱合反応をin vitroで分析する。胆汁や胃腸液の関与も検討を加える。また、フラボノイド抱合代謝物をペクチンとともに経口投与し、門脈血液中および末梢血液中でのフラボノイドを分析し、フラボノイド未変化体投与時との差を含めペクチンの影響を明らかにする。 以上の検討より、ペクチンの吸収促進作用の機序としてペクチンがフラボノイドの抱合代謝物の脱抱合に関わっていることを解明するとともに、その作用がフラボノイドの種類により異なるのか否かを明らかにする。結果のまとまりに応じて成果を発表する。
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