2022 Fiscal Year Research-status Report
がん患者における健康食品と医薬品併用の安全性に関する研究
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21K05490
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
西村 有希 昭和大学, 医学部, 講師 (40276572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉田 知光 昭和大学, 教養部, 教授 (80231299)
岩瀬 万里子 昭和大学, 医学部, 助教 (70424273)
三邉 武彦 昭和大学, 医学部, 准教授 (00622135)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 健康食品 / CYP3A / チトクロームP450 / がん患者 / サプリメント / food-drug interaction / 薬物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者が健康食品を利用する例は少なくないが、医薬品と併用した際の安全性については十分に検討されていない。特に抗がん剤は薬物代謝酵素であるチトクロームP450 3A (CYP3A)で代謝されるものが多いが、併用した健康食品によりこの酵素が阻害されると、抗がん剤の血中濃度が上昇し、有害作用が発現する可能性もある。このような相互作用を未然に防ぐため、本研究ではがん患者が利用する可能性がある健康食品がCYP3Aを阻害するかについて検討を行っている。 令和4年度はタヒボおよびモリンガ粉末の抽出エキスを用い、CYP3Aの指標であるミダゾラムの代謝活性に対する阻害効果をin vitro実験系で検討した。その結果、これまでの検討でCYP3A活性を阻害したカルノシン、スピルリナ、チャーガに加え、タヒボ、モリンガも本活性を濃度依存的に阻害することが示された。特にスピルリナ、タヒボ、チャーガ、モリンガによるCYP3Aの阻害は、生体内で相互作用を起こし得ると推測された。また、これら健康食品により、グレープフルーツジュースで知られているCYP3Aの不可逆的なmechanism-based inhibition (MBI)が生じるかを検討した。その結果、いずれの健康食品もCYP3Aに対しMBIをおこす可能性は低いことが示唆された。 一方、スピルリナ、タヒボ、モリンガにより生体内でCYP3Aの阻害を介する薬物相互作用が生じるかを明らかにするため、ラットを用いたin vivo実験系で予備試験を行った。ラットにこれら健康食品を単回経口投与し、その後、CYP3Aの指標薬物であるミダゾラムを経口投与した。経時的に採血し、血中のミダゾラム濃度を水を投与したコントロール群と比較した。その結果、スピルリナ投与によりミダゾラムの血中濃度が上昇する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、in vitro実験系で追加実験を行った。予定通り、重篤な薬物相互作用を引き起こすことが知られているmechanism-based inhibitionの可能性など、健康食品のCYP3Aに対する阻害様式について検討することはできた。 しかし、遅れていたin vitro実験に時間を要したため、ラットを用いたin vivo実験を十分に行うことができなかった。 各健康食品がヒト生体内でCYP3A阻害を介する薬物相互作用を生じるかを予測するためには、in vitro実験の結果のみならず、ラットを用いたin vivo実験を行い、総合的に考察する必要があるため、引き続き検討を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitro実験で得られた結果より、生体内でCYP3A阻害を介する薬物相互作用が生じる可能性があるスピルリナ、タヒボ、チャーガ、モリンガを用いて引き続きラットでin vivo実験を行う。 In vivoスクリーニング試験においてCYP3Aの指標薬物であるミダゾラムの血中濃度を上昇させる可能性が示されたスピルリナについて、CYP3A阻害を介する薬物相互作用が生じるか、本試験を行い検討する。タヒボ、モリンガについては、投与量やミダゾラムとの投与間隔などの条件を変えて検討する。また、チャーガについても同様に検討する予定である。 以上の結果を参考に、抗がん剤との薬物相互作用が示唆された健康食品について、健康成人を対象とした臨床試験を行い、併用の安全性を考察する。
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Causes of Carryover |
研究がやや遅れているため、令和4年度に行う予定であった臨床研究審査申請費を使用しなかった。また、新型コロナ感染症の影響で学会がオンライン開催になったため、旅費の使用がなかった。 ラットを用いたin vivo実験を継続して行うため、実験動物、血中濃度測定に必要な試薬類、物品を購入する。 また、臨床試験の準備費用(審査申請費等)および実施費用として使用する。 さらに、得られた結果を発表するための学会参加費や旅費、論文掲載費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)