2023 Fiscal Year Annual Research Report
イネを用いた長期栄養繁殖が成長やゲノムに及ぼす影響の解析と作物生産性向上への展開
Project/Area Number |
21K05521
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高橋 実鈴 (野坂実鈴) 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 助教 (20738091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イネ / 種子繁殖 / 栄養繁殖 / 低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は乾燥や低温による物理的ストレスや病原菌やウイルスによる生物的なストレスを受けながら成長を続けている。このような環境下で茎頂分裂組織は、葉・茎・腋芽等の地上部器官の分化を繰り返して植物の持続的な成長を支えている。茎頂分裂組織の機能は時間の経過とともに変化することはないのであろうか。本研究はイネを多年生植物のモデルとして利用し、種子由来の通常個体と栄養繁殖を繰り返した個体を比較することで、長期間、器官分化を続けた茎頂分裂組織において、茎頂分裂組織の機能が維持されているのか、あるいは時間の経過とともにその機能は変化しているのか明らかにすることを目指した。 これまでの研究から、低温処理により成長が抑制された植物個体では、茎頂分裂組織の機能や遺伝子発現が変化していることが考えられた。そこで本年度は、育苗期に低温を処理した栄養繁殖個体と低温を処理しない通常の種子由来の個体において、茎頂分裂組織における遺伝子発現を比較した。その結果、育苗期に低温を処理した栄養繁殖個体ではストレス応答遺伝子の発現が上昇していることが明らかになり、低温処理から数ヶ月経過した後も遺伝子発現に影響を与えていることが示唆された。また、実生のときに低温処理を受けた個体に由来する栄養繁殖個体は、再び低温を処理した場合に成長抑制を示すのか明らかにするため、実生のときに低温処理を受けた個体由来の栄養繁殖個体に低温を処理した場合と処理しない場合で、収穫期の草丈を比較した。その結果、実生のときに低温処理を受けた個体由来の栄養繁殖個体は低温を処理した場合と処理しない場合で草丈に差は見られなかった。実生のときに低温を処理しない個体に由来する栄養繁殖個体では、低温を処理した場合は処理しない場合に比べて草丈が抑制されることも確認した。このことから栄養繁殖個体は二度目の低温処理を受けた場合は成長抑制が緩和されることが考えられた。
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