2023 Fiscal Year Research-status Report
イネにおけるもみ枯細菌病抵抗性遺伝子の単離と機能解明
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21K05523
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
溝淵 律子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, グループ長補佐 (40425591)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イネ / 病害抵抗性 / もみ枯細菌病 / Burkholderia glumae |
Outline of Annual Research Achievements |
もみ枯細菌病はイネにおける種子伝染性の重要病害であるが、イネにおける抵抗性遺伝子は今まで明らかにされたものはない。課題担当者は、インド由来の在来品種「Nona Bokra」が強い抵抗性を示すことを見出し(Mizobuchi et al. 2013 TAG)、「Nona Bokra」の有する抵抗性遺伝子RBG1について解析を進め、RBG1はABAを負に制御することにより抵抗性を獲得していると推定された(Mizobuchi et al. 2023 Scientific Reports)。抵抗性品種「Nona Bokra」と罹病性品種「コシヒカリ」間でのRBG1の発現パターンおよび発現量には明確な違いがないことから、両品種のRBG1のアミノ酸の違いを生じさせるSNP(3カ所)が機能に影響を与える可能性を想定し、各々のSNPについて変異型のタンパク質を合成しリン酸化実験を行ったところ、RBG1は130番目のリシンが「Nona Bokra」型RBG1ではアスパラギンに置換されることによりリン酸化活性が高まり抵抗性に寄与している可能性がある(Mizobuchi et al. 2023 Scinetific Reports)。今後、RBG1を育種利用するためには、抵抗性遺伝子の有無をサンガーシークエンサーで調査することは困難であることから、抵抗性遺伝子の有無を簡便に判別できるマーカーが必要である。そこで、機能に関与するSNPをARMS法により判別できるマーカーを作出した。具体的には、感受性型プライマーに5‘末側に20塩基付加することによりPCRで増幅する断片の長さで判別できる。農研機構で近年育成した品種を中心として20品種についてPCRを行った結果、いずれも感受性型SNPを示し、この結果は菌の接種試験の結果(全て罹病性)と合致したことから、判別マーカーの有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年から2021年度まで、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための在宅勤務(交代勤務)を行ったため、圃場における実験材料の栽培が一部中止せざる負えない状況となり、実験が計画より遅れてしまった。現在までに、RBG1が植物ホルモンのうちABAと関与することを明らかにし論文化し、その知見を活かして育種で利用可能なRBG1判別マーカーを作出することができた。一方、ABAの定量実験がうまくいっておらず、RBG1-NILの植物体内でのABAの挙動はABAレポータ遺伝子の発現解析のみであり、まだ詳細は明らかになっていない。また、RBG1はMAPKKK遺伝子であり、OsMKK3が下流因子であることは明らかにしたが、さらに下流の因子の特定および、RBG1のABA応答性がどのように抵抗性獲得につながっているのかはまだわかっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
RBG1の下流因子の探索を進めるとともに、RBG1-NILの植物体内でのABAの挙動をさらに明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、ABAの定量実験がうまくいっておらず、次年度に使用額が生じた。次年度は、ABAの定量、ABA関連の発現解析のためのRNA抽出およびリアルタイムPCR実験等を行うため、その実験に関する消耗品費として使用する計画である。
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