2021 Fiscal Year Research-status Report
低肥料で持続可能なイネ生産に役立つ遺伝子探索と、深層学習による新形質分類法の確立
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21K05529
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
清水 顕史 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40409082)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝育種学 / 栄養ストレス耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本晴×KHAO NOK(耐性品種)のF5世代を、40倍に希釈した低栄養水耕液で5週間栽培し、乾燥重量を指標として耐性および感受性の分離を調べた。同じく連続的な分離を示したF3世代の結果と比較したところ、F3世代の同程度の低濃度水耕液栽培よりF5世代では厳しいストレスがかかっていたことが判明した(F5世代は水耕液あたりの供試個体数が多かったためと考えている)。KHAO NOKの栄養ストレス耐性は、無栄養から低栄養までで関わる遺伝子座が変動する可能性が示唆され、低栄養ストレスに対する品種間差のより精密な再評価を行うことで遺伝解析に最適な低栄養ストレス水準の見積もりをしておくことが重要であることが明らかになった。 親品種のチッソ吸収能力を濃度別に評価したところ、低栄養条件ではKHAO NOKの吸収能力は日本晴と同程度であることがわかった。KHAO NOKが低栄養栽培で示す耐性は、低濃度養分の吸収能力で説明できるのではなく、養分の利用効率で説明できると考えており、そのため解析を現在進めているところである。また、無栄養から低栄養にかけての耐性遺伝子の変動を観察する目的で、今年度内にナノポアシーケンサーの導入も進めた。これによりトランスクリプトームの解析を小規模に迅速に行うことができる。 日本晴×KHAO NOKのF5世代188系統は圃場でも栽培し、自殖種子を収穫した。これら自殖種子は2022年度も栽培し、世代を進めRILs集団を作成する。 日本晴とKHAO NOKの幼苗の画像から特徴抽出し品種分類を目的で、深層学習用のワークステーションの手配と予備解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、日本晴×KHAO NOKのF5世代で低栄養ストレスの評価を行い、耐性系統および感受性系統の確認を行うことができた。また圃場栽培で自殖世代を進め、RILs集団作成に向けて準備は順調に進んでいる。 KHAO NOKの耐性機構の評価を進め、吸収能力には品種間差がないことが明らかになったため、現在は養分利用効率の評価を進めている。これらの結果は日本晴×KHAO NOKの遺伝解析に利用することができる。 耐性機構に関わる発現遺伝子解析に向けて、低価格で迅速に小~中規模のトランスクリプトーム解析を進めるためナノポアシーケンスシステムの導入を進めた。また新たなストレス耐性の評価法確立に向け、深層学習を利用した形質分類の進める準備として、ワークステーションの準備と予備解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はRILs集団を完成させ、高密度連鎖地図を作製しておき、精密QTL解析の準備を進める。 KHAO NOKの低栄養ストレス耐性の再評価を行い、それらを踏まえて遺伝解析・発現遺伝解析を進めて、遺伝子単離の準備を進める。 機器の準備と予備解析を進めてきた、深層学習による品種分類を進める。
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Causes of Carryover |
グロスチャンバーの購入の予定を、ナノポアシーケンサーの購入に変更しその差額分は翌年度に繰り越し、発現遺伝子費用に使用することにした。
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