2021 Fiscal Year Research-status Report
無核化処理により「シャインマスカット」の香気成分組成が変化する分子機構の解明
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21K05560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本多 親子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40343975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 良弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20398390)
田中 福代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度分析研究センター, ユニット長 (50355541)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ブドウ / シャインマスカット / 無核化処理 / 香気成分 / GC-MS / ストレプトマイシン / ジベレリン |
Outline of Annual Research Achievements |
ブドウ「シャインマスカット」に、ストレプトマイシン処理およびジベレリン処理による無核化処理を行い、8月上旬から9月下旬にかけて果実(果皮および果肉を含む)のサンプリングを行った。その後、GC-MSにより香気成分の分析を行い、無核化処理および無処理区(CK区)の果実における香気成分の特性を調べた。 アノテートされた212の香気成分に対して主成分分析を行った結果、無核化処理の有無によって果実に含まれる香気成分の傾向が異なり、無核化処理区ではPC1が、CK区はPC2が変化する傾向が認められ、特に無核化処理区のPC1の変動幅が大きいことが明らかとなった。ヘキセノール,ヘキセナール等のC6化合物やリナロール(マスカット香)、フェランドレン、ファルネセン等のテルペン類の成分の増加が、PC1の負の方向(成熟方向)に強く寄与した。一方で、PC1正の方向(未熟)への寄与が強い成分は、ベンズアルデヒドとその関連化合物、1-オクテン-3-オンや1-ペンテン-3-オン等の不飽和ケトン、2-オクテナール等の2-不飽和アルデヒド(C6を除く)等であり、これらの成分は経時的に減少することが明らかとなった。また、無核化処理区の果実とCK区の果実とでは、特に成熟初期のプロファイルの相違が大きいことがわかった。 これらの結果から、無核化処理を行った種なしブドウと無処理の種ありブドウの食味の差に香気成分含有量の差が影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無核化処理および無処理区(CK区)の「シャインマスカット」の果実における香気成分の特性を調べた結果、成熟過程における香気成分の変動特性が両者では大きく異なること、特に成熟初期のプロファイルの相違が大きいことが明らかとなった。同時に、香気成分分析に供試した果実(一部)において、RNA-seqを行った。現在、遺伝子発現の特性の違いについて解析中である。 さらに、無核化処理区とCK区とで香気成分に差が生じる原因が、処理の結果種なしになることが原因なのか、あるいは無核化処理によるのものなのかを探るため、無核化処理を行ったにもかかわらず種ありとなった果実をサンプリング済みであり、現在、香気成分分析後のアノテーションを実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
香気成分プロファイルおよびRNA-seq解析のデータを統合解析し、香気成分組成に変化が生じる代謝過程やその生合成に関わると推察される遺伝子を特定する。状況に応じて、着目した遺伝子のRT-PCRによる発現解析を実施する。 無核化処理を行ったが種ありとなった果実の香気成分を分析し、無核化処理区とCK区とで香気成分に差が生じる原因が、種がないことによるのか、あるいは無核化処理によるのものなのかを明らかにする。 さらに、ジャスモン酸等の散布による無核化処理区の果実での香気成分の変化(回復)について、調査を行う。散布時期(収穫前、収穫後)等の検討も行う。
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Causes of Carryover |
予定よりも、消耗品の購入量等が少なかった。次年度以降には、消耗品の購入、英文校閲、論文投稿代等に使用する予定である。
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