2021 Fiscal Year Research-status Report
神社の立地等に見るエリアマネジメント拠点のあり方に関する研究
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21K05661
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
下村 彰男 國學院大學, 観光まちづくり学部, 教授 (20187488)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神社 / エリアマネジメント拠点 / 地域コミュニティ / 立地地形 / 空間構成 / 活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国の伝統的エリアマネジメント拠点である神社に注目し、その立地および空間構成と、そこで展開されるコミュニティ活動との関係分析を通して、都市の緑地をはじめとするオープンスペースが、エリアマネジメント拠点として成立するうえでの空間面でのあり方について考究することとし、以下の2点を目的とする。(1)神社の立地および空間構成について調査・整理して、その規定要因について検討するとともに、その場で展開される活動との関係を分析することを通して、地域コミュニティの核としての空間面でのあり方を明らかにする。(2)神社の空間的側面の分析、および各地で展開されているエリアマネジメント拠点の事例分析を通して、エリアマネジメント拠点のあり方について考察する。 そこで2021年度は、①神社の立地等に関する文献・資料調査を実施し、神社の立地および空間構成に関する既往の知見を収集整理するとともに、コミュニティの核としての機能との関係について整理・抽出することを検討した。そして、立地や空間構成の実態を把握し、活動との関係を分析するための、②調査対象の選定についても検討を進めた。調査対象の選定に当たっては、都内の複数の神社をプレ調査し、神社が鎮座する地形、神社の規模、旧社格、主祭神、周辺地域内での神社相互の関係などについて把握し、比較検討を行った。 その結果、旧社格に関しては、基本的には郷社以下の村社など地域社会と関わりの深い神社が対象となるが、旧社格で絞り込みを行うのではなく、一定のエリアの中で複数の社格の神社を調査し、分析・検討を進めた方がよいと判断された。また地形に関しては、臨水域、平地域、境界域、台地域別に調査・検討することが適切であると考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、対象として取り上げた神社について、立地、空間構成、地域活動を同じ条件下で調査し、可能な限り定量的に分析したうえで、エリアマネジメント拠点となるための条件(傾向)を抽出しようとするものである。 したがって、東京都だけでも1400と言われる神社から、適切な調査対象を剪定する必要がある。地域コミュニティの拠点としてのあり方を考究することを考えると、規模が大きく格(旧社格)の高い旧官社(官幣社、国幣社等)は相応しいとは言えず、むしろ郷社以下の社格で村社や無格社を調査対象とすることが適切であると考えられる。そして旧郷社以下の神社をとりあげてプレ調査を実施し、神社が鎮座する地形、神社の規模、旧社格、主祭神、周辺地域内での神社相互の関係などについて把握し、比較検討を行った結果、この段階で(旧)社格による明確な差異を見出すことは難しく、一定のエリアの中での複数の社格の神社を対象として調査を行い、分析の過程で社格による差異を検討する方がよいと考えられた。 また、立地する地形に関しては、品川区、板橋区、杉並区でプレ調査を実施し、その結果、臨水域、平地域、境界域(斜面域)、台地域別に調査し、それぞれに検討することが適切であると考えられた。 そして上記のような調査・検討に結果、調査対象神社に関しては、地域コミュニティの神社利用のあり方が、大きく変容してきていることが想定され、祭りをはじめとする各神社における活動の歴史的な変遷をも並行して調査しつつ、それらとの関係を踏まえた上で対象を設定する必要があると考察された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度である2021年度は、今年度以降実施する、エリアマネジメント拠点形成の条件となると想定される、各神社の立地(地形)、空間構成、神社利用(コミュニティ活動)について調査する対象神社を選定するところまで進めておきたかった。しかしながら、平地域、境界域、台地域に鎮座する神社についてプレ調査を実施したところ、仮説として想定していたような傾向を十分に把握することが難しく、特に空間構成に関しては、神社によってかなり差異があることが確認された。これは神社を取り巻く地域コミュニティが大きく変化し、神社におけるコミュニティ活動が変容し減少傾向にあること、また、近代以降、神社境内自身が大きく変容していることが理由として考察された。 そこで、まずは神社利用、つまり神社における地域コミュニティの活動の変遷について、全体的な傾向とともに個別事例的に把握すること、また、地形図等により近代以降の神社境内の変容について、その傾向を整理・把握することが必要であると考えられる。今年度は、この2点について検討を進めるとともに、引き続き、臨水域、平地域、境界域(斜面域)、台地域別に、上記に関する現状を調査するとともに、山地域、そして、東京を離れた農村域についても調査を広げて、全体的な傾向を把握していくものとする。 合わせて、現代におけるエリアマネジメント拠点の先進事例調査などをも交えて、現状の傾向を把握するための視点、例えば、象徴性、親近性、依拠性などについて検討を進めるものとする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあって十分な現地調査が実施できなかった点が大きい。研究代表者個人による簡易なプレ調査の実施を通して、考究は進展させたものの、コロナの感染に関わる配慮から、複数の調査補助者の支援を得ながらの系統的な調査を実施することができなかったために、当初想定していた人件費や旅費を支出することができなかった。 ようやくコロナ禍に関しても先行きが見えてきた様子なので、今年度は、しっかりした実態の把握や、歴史的な史実に関する調査を進展させたいと考えている。
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