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2021 Fiscal Year Research-status Report

サクラマスを用いたテロメア長に対する親の生活史形質の影響および寿命との関連性

Research Project

Project/Area Number 21K05755
Research InstitutionNippon Veterinary and Life Science University

Principal Investigator

山本 俊昭  日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (30409255)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 北西 滋  大分大学, 理工学部, 准教授 (90552456)
Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywordsテロメア / 緯度クライン / サクラマス / 父性効果
Outline of Annual Research Achievements

テロメアは真核生物の染色体の末端部に位置し、6塩基の繰り返しをもつDNAと複数のタンパク質からなる。テロメア長はテロメラーゼと呼ばれる逆転写酵素の働きによって維持および伸長する一方、体細胞の有糸分裂に伴い短縮しており、ある一定の長さに達すると短縮できなくなる。テロメア長が短縮の限界に達すると、細胞は分裂不能となり、細胞の老化やアポトーシスが誘発され、これに伴って細胞内ではP53遺伝子などが活性化されることが知られている。したがって、テロメアの長さは個体の老化や寿命と関連していると考えられており、これまでテロメア長と寿命や病気との関連性などの研究がヒトをはじめ哺乳類で多数行われている。
本研究の対象であるサクラマスの生活史には顕著な二型が見られる。ひとつは河川の成長のみで成熟に達する残留型と、もうひとつは河川で成長した後、海を回遊して再び産卵のため母川に戻ってくる降海型である。申請者はサクラマス親の2つの生活史形質の違いが子の成長および成熟に対してどのような影響を及ぼすかについて実験下および野外において様々な研究を行ってきた。本年度はこれら交配実験を行ったサンプルを主に用いて子のテロメア長を調べた。その結果、残留型の親から生まれてきた子は降海型の親から生まれてきた子に比べてテロメア長が長いことを明らかにした。さらに、北海道全域において降海型および残留型のオス親の精子を採取しテロメア長を測定したところ、精子においても残留型のオス親のほうが降海型のオス親に比べて長いことが示された。また、緯度によってもテロメアの長さが違っており、非常に興味深い知見が今年度得られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

北海道全域におけるサクラマスの雄親の配偶子をサンプリングすることができ、各個体のテロメア長を測定することができた。それら結果は、本研究の当初予測していた通り残留型雄親のほうがテロメア長が長いことを示す結果であった。興味深い点としては、緯度によってその傾向が変化していたことであった。今後は、生活史形質と生存率の違いなどを飼育下および野外において検証する必要があると考えており、22年度以降に行う予定としている。
また、成熟個体からは血清を採取し、それら血液サンプルより酸化ストレスの指標であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)をキットを用いて測定した。その結果、酸化ストレスに対する抵抗性が高い個体ほどテロメア長が長いことも示された。本年度は、これら解析に必要なサンプリングが計画通り行えたこと、さらには実験による測定ができ、得られた成果が興味深い知見が得られたことから、概ね順調に進んでいるといえる。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究としては、昨年度と同様に北海道全域においてサンプリングを行うことを行う予定である。その理由としては、昨年度は数十年に一度と考えられているほど異常気象であり水温が非常に高かった。このことは変温動物である魚類にとっては大きな影響を及ぼしており、テロメア長においても大きく影響したと考えられる。実際にテロメア長は他の年度と比べると異常な値と考えられる個体も見受けられた。よって、昨年度サンプリングした地域で再度調査を行うことにより、地球温暖化に伴う水温上昇がテロメア長、さらには寿命にどのような影響を及ぼすのかを検討することが可能であると考えている。
また、今年度はテロメアの伸長作用に影響するテロメラーゼ酵素の測定を確立させたいと考えている。昨年度はプレテストとして肝臓や心臓からのRNA抽出およびテロメラーゼ測定を行ってきた。これら調査方法はある程度正確に実施できる段階まで手技を21年度は確立した。よって、22年度は多くの地域より組織をサンプリングし、各地域におけるテロメラーゼ活性の動態を明らかにしたいと考えている。これらテロメラーゼ酵素活性値と酸化ストレスであるSODとの関連性を知ることによってテロメア長の動態が解明できることが期待される。

Causes of Carryover

今年度に野外調査を重点的に行うため、10万を繰越金とした。

  • Research Products

    (3 results)

All 2022 2021

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 尾瀬ヶ原源水生息するイワナSalvelinus leucomaenisの年齢、体長組成および生息密度2022

    • Author(s)
      山本俊昭・本橋篤・松澤夏鈴・牧野楓・古荘寿奈・田中美有・鏡友紀・滝透維・小松奈央・藤原英史
    • Journal Title

      低温科学

      Volume: 80 Pages: 445-451

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 尾瀬ヶ原の下ヨサク沢に生息するイワナSalvelinus leucomaenisの遺伝的特性について2021

    • Author(s)
      山本俊昭・藤原英史・萩原富司・野原精一
    • Journal Title

      陸水学雑誌

      Volume: 82 Pages: 217-224

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Links between paternal life history and offspring metabolic rate and body size during early life in masu salmon <i>Oncorhynchus masou</i>2021

    • Author(s)
      Yamamoto Toshiaki、Kitanishi Shigeru、Sato Masato、Yagisawa Masaru、Kishi Daisuke
    • Journal Title

      Ecology of Freshwater Fish

      Volume: 30 Pages: 296~305

    • DOI

      10.1111/eff.12584

URL: 

Published: 2022-12-28  

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