2022 Fiscal Year Research-status Report
経済成長下におけるガーナの小農生計メカニズムの変容と持続的な開発手法の構築
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21K05800
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中曽根 勝重 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (10366411)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガーナ / 営農の変化 / 生計の多様化 / 食料安定供給 / 所得向上 / 持続的開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現在、ガーナの農民が抱える問題を抽出し、安定した食料供給システムの確立と所得向上のための開発方途を探り、営農改善ならびに地域社会・経済の持続的発展プログラムの形成に直結した研究手法の構築を目指すことである。 令和4年度にガーナ北部で実施した現地調査結果からは、ガーナの経済成長にともない各コンパウンド(同居家族)における独立した農民数が、15年前と比較して1/3にまで減っているケースが見られた。家長は、家族を食べさせるために食料の確保が欠かせないため、自家消費向け作物の栽培を中心としていることに変わりないが、若年の農民は、離農したり一時的に農業を離れたりして非農業活動に従事し、現金稼得活動に取り組む傾向が強くなっていた。つまり、各コンパウンドでは、市場経済化の影響により、生計の多様化が加速しているようである。この要因の1つには、ガーナの農村部まで浸透してきた市場経済の影響により、日常の生活において現金を利用する機会が増加したことがあげられる。ただし、各コンパウンドでは農民数の減少により、農業活動に対する労働不足が見られ、その不足する労働力を補うために農業機械の利用や賃労の利用による家計支出が増大するケースも現れている。したがって、今後もガーナの経済成長が継続し、現金所得の稼得を目的とする生計の多様化が加速するのであれば、各コンパウンドにおける営農様式の変更は避けられないことが予測される。 とはいえ、コンパウンドの家長自らが農業から離れることは考えられないため、本研究では、今後の課題として、家長を中心とするコンパウンドの農民が、食料作物の生産量を増加させるために必要な中間投入財の使用方途や現金稼得向上のための適切な作物選抜・栽培管理・販路の確立などについてのパイロット試験を行い、中間財投入効果や販売作物の選抜を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の2年目は、調査対象地域の関係資料・文献の収集による先行研究のサーベライズを行うともに、現地調査を実施した。しかし、初年度は、コロナ禍の影響により、現地調査(予備調査)は中止・延期としたため、従来、初年度で行う予定であった、①本調査を効率的に実施するための研究環境整備、②調査対象農村/事例調査対象農家の選定、③小農の農業生産技術/営農体系と農業経営/生計メカニズムの実態把握、を行うにとどまった。 そのため、初年度における現地調査の未実施の影響により、当初は2年目に予定していた食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験とその評価の取り組みが遅れ、この計画を3年目に実施してその効果を評価することとした。 上記のように、本研究の中心的な活動の進捗が遅れているため、研究の達成は、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまでと同様に、資料・文献収集と先行研究のサーベライズを実施するとともに、現地調査および食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験を行う。現地調査では、令和4年度に実施した調査結果を基に、「小農の農業生産技術/営農体系と農業経営/生計メカニズムとその変容」を把握するための面接・アンケート調査を再び実施する。アンケート調査結果はできる限り現地で可及的にパソコン入力・整理を行い、調査データを確認しながらの現地調査を実施する。 さらに令和5年度は、令和4年度に実施できなかった食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験に関し、試験協力農家に「食料安定供給に向けた作物」と「所得向上に向けた作物」の種子・化学肥料などの投入財を配布し、パイロット試験を実施する。パイロット試験の栽培結果と販売実績などの結果は、調査協力機関と連携して入手し、その試験結果から食料の安定供給と作物販売による所得向上の可能性について考察する。
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Causes of Carryover |
初年度であった令和3年度は、世界的なコロナウィルス感染症の影響により、当初計画していたガーナでの現地調査が実施できなかった。そのため、初年度の所要額が、次年度使用額となったため令和4年度に複数回の現地調査を実施する可能性を探ったが、農繁期におけるパイロット試験実施が困難であったため、1度のみの現地訪問となったことから、令和4年度も次年度使用額が生じてしまった。 令和5年度は、パイロット試験の準備を現地協力者に依頼し、農繁期でのパイロット試験実施を進めるとともに、次年度使用額と当該年度の所要額を利用して、農繁期における現地訪問と試験結果確認のための現地訪問を実施する予定である。
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