2023 Fiscal Year Research-status Report
経済成長下におけるガーナの小農生計メカニズムの変容と持続的な開発手法の構築
Project/Area Number |
21K05800
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中曽根 勝重 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (10366411)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ガーナ / 営農の変化 / 生計の多様化 / 食料安定供給 / 所得向上 / 持続的開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現在、ガーナの農民が抱える問題を抽出し、安定した食料供給システムの確立と所得向上のための開発方途を探り、営農改善ならびに地域社会・経済の持続的発展プログラムの形成に直結した研究手法の構築を目指すことである。令和5年度は、食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験の導入を前提とした現地調査(本調査)を実施した。その結果、調査対象コンパウンド(家屋敷)の家長や年配の男性は、自家消費向け作物の栽培により家族の食料確保を目指しているが、家族労働不足や化学肥料価格の高騰により、その収量が不安定となっている。そのためいくつかのコンパウンドでは家族が必要とする食料を確保できないケースも見られたが、その場合、親族からの支援によって最低下の食料を確保していた。一方、調査対象コンパウンドでは、男性・女性を問わず同居する家族の多くが現金の稼得を目的として非農業活動に参入していた。男性は薪やロープの生産・販売、女性はシアーオイル・バターの生産・販売など自分たちの生活にも利用される製品製造が多く見られた。さらに、機織り業やオート三輪での運輸業に取り組む若年層の村民も見られた。現金の用途は、多くの男性が不足する食料の確保に向けられていたのに対し、女性は家計の補填と子どもの養育費に振り向けられていた。つまり、ガーナ北部の農村においても市場経済の影響が加速した結果、現金所得の稼得を目的とする生計の多様化が進展し、各コンパウンドにおける営農様式に大きな変化が出現しつつある。 とはいえ、コンパウンドの家長や年配の男性は自家消費向け作物の栽培をやめることは考えられないため、本研究では、家長を中心とするコンパウンドの農民が、食料作物の生産量を増加させるために必要な中間投入財の使用方途や現金稼得向上のための適切な作物選抜・栽培管理・販路の確立などについて検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の3年目は、調査対象地域の関係資料・文献の収集による先行研究のサーベライズを行うともに、パイロット試験を前提とした現地調査を実施した。初年度はコロナ禍の影響により現地調査を中止・延期したため、令和5年度は実質的な2年目として食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験とその評価に取り組むことを前提に調査を実施した。その結果、化学肥料の高騰や気象変化の影響で、農民が作付けする作物に変化が生じており、パイロット試験のための作物選定の見直しを余儀なくされ、本研究課題自身を1年延長することとした。以上のように、本研究の活動の進捗が遅れているため、研究の達成は、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を令和6年度まで延長することとした。令和6年度は、これまでと同様に、資料・文献収集と先行研究のサーベライズを実施するとともに、現地の活動では調査を実施すると同時に昨年度着手できなかった食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験を行う。現地調査は、本研究の課題テーマである「小農の農業生産技術/営農体系と農業経営/生計メカニズムとその変容」を把握するための面接・アンケート調査を再び実施する。 また令和6年度は、令和4・5年度に実施できなかった食料安定供給と所得向上のためのパイロット試験に関し、試験協力農家に「食料安定供給に向けた作物」と「所得向上に向けた作物」の種子・化学肥料などの投入財を配布し、パイロット試験を実施する。パイロット試験の栽培結果と販売実績などの結果は、調査協力機関と連携して入手し、その試験結果から食料の安定供給と作物販売による所得向上の可能性について考察する。
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Causes of Carryover |
初年度であった令和3年度は、世界的なコロナウィルス感染症の影響により、当初計画していたガーナでの現地調査が実施できなかった。令和4年度は複数回の現地調査を実施する可能性を探ったが、農繁期におけるパイロット試験実施が困難であったため、1度のみの現地訪問となったことから、令和4年度も次年度使用額が生じた。令和5年度は、パイロット試験の準備を現地協力者に依頼し、農繁期でのパイロット試験実施を進めるとともに、次年度使用額と当該年度の所要額を利用して、 農繁期における現地訪問と試験結果確認のための現地訪問を実施する予定であったが、現地の農業を取り巻く環境の変化が影響し、農民が作付けする作物に変化が生じており、パイロット試験を実施するに至らなかった。そのため、本研究課題の1年延期を申請した。
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