2022 Fiscal Year Research-status Report
筋損傷回復時の筋線維タイプ決定における運動神経の重要性
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21K05896
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
澤野 祥子 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (60403979)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 筋損傷 / 筋萎縮 / 筋肥大 / 運動神経 / 筋線維 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の骨格筋は、遅筋型(1型)、速筋型(2B型)、その中間の2A、2X型に分類される。運動などの後天的な外的因子により骨格筋線維タイプが変化することが明らかになっているが、単一筋線維レベルでタイプ変化を遂げる際、筋線維を支配する運動神経がタイプ変化にどの程度影響を及ぼすのかほとんど分かっていない。そこで本研究では、筋損傷から骨格筋再生途上で増加する「ハイブリッド筋線維」の増加とその後の減少が坐骨神経切除によって影響を受けるか検討することで運動神経の役割を明らかにすることを目指す。 本年度は、骨格筋損傷からの回復あるいは筋肥大に関与する成分についての検討を行った。まず、マウス骨格筋幹細胞C2C12を用いた検討を行った。C2C12筋管細胞に成分Aを共存させることにより、筋合成系の活性化およびミオシン重鎖発現量の増加、筋分解抑制に寄与することを見出した。また、C57BL/6Jマウスにその成分を1ヶ月間投与したところ、マウスヒラメ筋および長趾伸筋の筋線維断面積の分布が増大の方向にシフトしており、断面積平均値に有意な増加が認められた。したがって、成分Aの投与により筋肥大が起こったことが示唆された。 このように、筋損傷からの回復あるいは筋肥大を促す成分を見出したことから、筋回復・筋再生を効率的にコントロールできることが示唆された。これらの知見を活用し、最終年度では、筋線維再生時の筋線維タイプ決定に運動神経がどのような役割を担っているのかを明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、骨格筋損傷からの回復に寄与、あるいは、筋肥大に関与する成分を複数見出すことができた。これにより、筋線維の再生と運動神経支配との関係を効率的に検討することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、運動神経が筋線維再生時に果たす役割を検討するため、筋損傷後の回復時の運動神経および神経筋接合部の動態について評価する。 筋細胞と運動神経が連結する神経筋接合部(NMJ)には、成熟アセチルコリン受容体(成熟AchR)が密集している。この成熟AchRを染色できるαブンガロトキシンを用いて、通常筋線維あるいはハイブリッド筋線維におけるNMJの有無を調べる。通常1種類の運動神経は1種類の筋線維のみと接合しNMJを形成するが、ハイブリッド筋線維は運動神経による支配がない、すなわちNMJが存在しないと推測している。
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Causes of Carryover |
計上していた国際学会に関わる発表費・渡航費などの支出が新型コロナの影響によりなくなったため。また、運動神経支配の研究に関わる備品・消耗品の購入が最終年度に持ち越されたため。したがって、生じた使用額は運動に係る備品、神経接合部の動態解析関連の試薬を購入するために使用する。
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