2022 Fiscal Year Research-status Report
アルギニン製剤の給与が定時胚移植後の受胎率に及ぼす影響
Project/Area Number |
21K05902
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
平田 統一 岩手大学, 農学部, 准教授 (20241490)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アルギニン / 黒毛和種牛 / 経腟採卵OPU / 体外胚生産IVP / OPUドナー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究目的:我々の先行研究で,アルギニン(Arg) 5 g あるいは 60 gを定時人工授精(tAI)前2日に頸静脈へ投与することで雌ウシの受胎率が改善すること(2016),ルーメンバイパスArgを給与して行ったtAIにおいて,未経産牛の受胎率を改善する傾向があること(2021)を見出した.Argがどのような作用機序で雌牛の妊孕性を改善するのか明らかにする目的で,Argを給与した,あるいは給与しない供卵子牛(ドナー)から経腟採卵-牛胚体外生産(OPU-IVP)法で作出した胚を受胚牛に移植し,受胎率を比較した. 2.研究方法:ドナーは黒毛和種経産牛で,OPU前10日から4回目のOPUが終了するまでの間,ルーメンバイパスArg(RP-Arg,味の素)を100g/日・頭(有効Arg 20g)を給与した.OPU-IVP法は当方の常法に依った.2022年2月24日ー3月17日に3頭のドナーから合計45個の胚盤胞を得た.一方,RP-Argを給与しないドナーから対照牛胚を作出した.黒毛和種未経産牛,経産牛の自然発情例,または排卵同期処理を行った受胚牛の8日目に胚移植を行った. 3.研究成績の概要:対照牛胚の受胎成績は46.9%(15/32頭),その内訳は未経産牛が38.5%(5/13頭),経産牛が52.6%(10/19頭),RP-Arg給与牛胚の受胎成績は46.9%(15/32頭),その内訳は未経産牛が50.0%(7/14頭),経産牛が44.4%(8/18頭)で有意な差はみられなかった.このことは,OPU法が小卵胞から未熟卵子を吸引回収して活用する方法であり,この卵胞発育段階ではまだ卵子はArgの影響を受けていないことが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受胚牛(黒毛和種雌ウシ60頭)をアルギニン(Arg)を給与するものとしないものをに任意に区分し、胚移植して、Argが雌ウシの妊孕性に及ぼす影響を検討した。また、経腟採卵(OPU)-体外胚生産(IVP)処置における供卵子牛(ドナー)3頭について、Argを給与する試行と給与しない試行でArg暴露胚、非暴露胚を作成して胚移植を行った。これらの実験は、計画通りに進行した。一方、子宮内膜厚や支給血流量、各種血液検査所見などの調査項目については十分な観察を行えなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
胚移植の受胚牛や卵子ドナー牛に対するアルギニン(Arg)給与が受胎率に顕著な影響を示し得なかったことから、卵胞成熟期の限られた時期にArg給与の効果が示されると仮定し、卵胞成熟に制限を加える短期間の定時授精プロトコールを設計して、Arg給与効果が示されるか検討する。
|
Causes of Carryover |
当研究室が入る建物(岩手大学農学部御明神総合施設)が大型改修になり、実験室が2022年8月29日から12月5日まで使用できなかったこと、その後引っ越しに伴う工事が一部2023年3月22日まで遅延し、実験室の完全稼働までに半年以上を要したことから、計画通りには実験が進まなかった。
|