2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the mechanism of histone H2A.Z remodeling and development of a novel reprogramming technology
Project/Area Number |
21K05978
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
三谷 匡 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10322265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
岡村 大治 近畿大学, 農学部, 講師 (80393263)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒストンH2A.Z / 脱アセチル化酵素阻害剤 / クロマチンリモデリング / 受精卵 / 体細胞核移植 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、体細胞核移植(SCNT)胚の発生能を改善するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)がSCNT後のドナー細胞核からのヒストンH2A.Zの除去作用をもつことに着目し、その責任因子を探索することを目的とする。 [課題Ⅰ]受精卵におけるヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子の探索と機能解析 MII期卵内に存在し、受精後ヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子を共免疫沈降(Co-IP)で捕捉し質量分析により抽出することを目的として、GFP-H2A.Z、FLAG-H2A.Zおよび3xFLAG-H2A.Z mRNAを調製するための発現ベクターを構築した。 [課題Ⅱ] 受精卵におけるHDAC阻害剤と相互作用する因子の探索と機能解析 HDAC阻害剤(SAHA)を固定化した磁気ビーズを用いたchemical pull-downにより、卵細胞質中の相互作用因子をMII期卵・活性化卵で比較し選定する。初年度である令和3年度は、卵子のような微量サンプルから本法により既知の相互作用因子の検出が可能かを検討した。卵子100個分のタンパク質からSAHA固定化ビーズを用いて精製したタンパク質の中に、SAHAがターゲットとしているHDACが検出された。そこで、本法を用いて卵子中に存在するSAHAのターゲット因子の探索を質量解析により行った。その結果、線維芽細胞からは864因子、MⅡ期卵子からは139因子、活性化6時間後の卵子(6hpa)からは101因子が検出された。質量解析のデータから、MⅡ期卵子と6hpa卵子で共通して検出され、かつ線維芽細胞では検出されない因子として16因子が抽出された。その中からE2酵素を介したタンパク質のユビキチン化に関与する分子等、いくつか興味深い候補分子が抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、研究年度初年度であることから、課題Ⅰおよび課題Ⅱについて、高感度磁気ビーズを用いた共免疫沈降/chemical pull-downの条件設定と質量解析を行った。 [課題Ⅰ]受精卵におけるヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子の探索と機能解析 MII期卵内に存在し、受精後ヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子を共免疫沈降(Co-IP)で捕捉し質量分析により抽出することを目的として、GFP-H2A.Z、FLAG-H2A.Zおよび3xFLAG-H2A.Z mRNAを調製するための発現ベクターを構築した。すでに作製済みのGFP-H2A.Zについて、GFPの干渉を軽減することを目的としてGFPとH2A.Zのリンカー部位をGSリンカーに置き換えたところ、GFP-H2A.Z mRNA注入後の受精卵における当該タンパク質の予想外の挙動を認めた。原因究明のために時間を要し、今年度予定していたベクター構築に遅れが生じた。なお、当研究室で取り組んでいる関連研究において、受精卵を用いた共免疫沈降と質量分析は着実に進んでいるため、ベクター構築後は計画を遂行できると考えている。 [課題Ⅱ] 受精卵におけるHDAC阻害剤と相互作用する因子の探索と機能解析 当初計画通り、質量分析を実施し、候補分子の抽出を行った。さらに、候補分子より推定される機能についての機能解析に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
[課題Ⅰ]受精卵におけるヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子の探索と機能解析。①令和3年度に構築したGFP-H2A.Z、FLAG-H2A.Zおよび3xFLAG-H2A.ZにヒストンH2A.XのC末端領域(XC23)を繋いだmRNA発現ベクターを構築する。各々のmRNAをMII期卵に注入・発現させ、2細胞期で胚を回収し、抗GFP抗体あるいは抗FLAG抗体を結合した高感度磁気ビーズを用いてCo-IPを行い、MS解析より候補分子の絞り込みを行う。 ②候補分子について、卵子のノックダウンや培養細胞への強制発現等を行い、分子生物学、細胞生物学、3D-FISH解析等を用いてH2A.Zの除去の仕組みを明らかにする。 [課題Ⅱ]受精卵におけるHDAC阻害剤と相互作用する因子の探索と機能解析。②令和3年度に取得したMS解析結果より抽出したHDACiと相互作用する候補分子について、卵子のノックダウンや培養細胞への強制発現等を行い、分子生物学、細胞生物学、3D-FISH解析等を用いてH2A.Zの除去の仕組みを明らかにする。卵子のノックダウンには工夫が必要であり、GV期卵でのsiRNAによる手法については実績はあるが成熟卵の作製効率は低いことが課題である。そこで、近年開発されたTrim-Away法によるノックダウンについて着手しており、令和4年度において実験系を確立し、候補分子の検証を行う。また、候補分子との相互作用因子の探索と候補分子の機能解析等を行う。さらに、体細胞核移植胚を用いた評価により、HDAC阻害剤を基点とするヒストンH2A.Zの除去機構ではたらく分子メカニズムを明らかにしていく。 [課題Ⅲ]ヒストンH2A.Zの除去機構を利用した新規リプログラミング支援技術の開発。iPS細胞の樹立効率の改善や多様な種に対するユニバーサルな支援技術としての可能性を探っていく。
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Research Products
(2 results)