2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on the mechanism of histone H2A.Z remodeling and development of a novel reprogramming technology
Project/Area Number |
21K05978
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
三谷 匡 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10322265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
岡村 大治 近畿大学, 農学部, 講師 (80393263)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒストンH2A.Z / 脱アセチル化酵素阻害剤 / クロマチンリモデリング / 受精卵 / 体細胞核移植 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、体細胞核移植(SCNT)胚の発生能を改善するHDAC阻害剤がSCNT後のドナー細胞核からのヒストンH2A.Zの除去作用をもつことに着目し、その分子メカニズムを解明することを目的とする。 [課題Ⅰ]受精卵におけるヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子の探索と機能解析 活性化卵子(6hpa)に電気穿孔法でGFP-H2A.Z及びH2A.XのC末端23個のアミノ酸を付加したGFP-H2A.Z_XC23 mRNAを導入し局在について解析した。その結果、GFP-H2A.Zは24hpaから急速に消失する一方、GFP-H2A.Z_XC23は48hpaまで核内に維持された。さらに、GFP-H2A.Z_XC23の発現により発生遅延や発生停止が観察された。次に、同様の方法で、ヒストンH2A.Zの除去機構への新規転写の関与について検討を行った。その結果、αアマニチン6~24hpa添加区では徐々に減少は認めたものの96hpaにおいても核局在は維持された。これらの結果より、ヒストンH2A.Zの除去には卵子の活性化に伴う新規転写が関与している可能性が示された。 [課題Ⅱ] 受精卵におけるHDAC阻害剤と相互作用する因子の探索と機能解析 SCNTで有効なHDACiであるSAHA固定化した磁気ビーズを用いて、線維芽細胞、MⅡ期卵子、活性化卵子(6hpa)でChemical pull-downと質量解析を行った。その結果、線維芽細胞からは864因子、MII期卵子からは139因子、6hpaからは101因子が検出された。MII期卵子と活性化卵子で共通して検出される卵子特異的なSAHAのターゲットを16因子に絞り込んだ。そのうちIsoform 2 of Probable E3 ubiquitin-protein ligase (DTX2)のみMII期卵子と活性化卵子で高頻度に検出されていた。DTX2はZn fingerのひとつであるRING finger domainを有しており、in vitro translationとchemical pull-downによりSAHAと直接相互作用することを確認した。以上から、DTX2の阻害作用がSCNT後の発生能改善に繋がっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は、令和3年度の計画の遅れを解消しながらも、得られた結果をもとにいくつか新たなアイディアについて検証した。 [課題Ⅰ]受精卵におけるヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子の探索と機能解析 令和3年度において、ヒストンH2A.Zと相互作用する因子を捕捉するためのタグ付きH2A.Zのベクター構築に課題を残したが、令和4年度でベクター構築できた。当研究室で取り組んでいる関連研究において、受精卵を用いた共免疫沈降と質量分析は着実に進んでいるため、今後は計画を遂行できると考えている。令和4年度は、それと並行して、受精後にみられるグローバルなヒストンH2A.Zの除去における卵子の活性化に伴う新規転写の関与について着目し、αアマニチンを用いて新規転写の関与の可能性を見出すなど興味深い結果を得ている。 [課題Ⅱ] 受精卵におけるHDAC阻害剤と相互作用する因子の探索と機能解析 質量分析の結果抽出した候補分子としたDTX2の機能として、リボシル化タンパク質の分解がある。HDACiによるDTX2のリボシル化タンパク質の分解の抑制について検討した結果、線維芽細胞ではリボシル化タンパク質の蓄積がみられたのに対し、活性化卵子ではリボシル化タンパク質が減少していた。そこで、質量分析の結果を見直したところ、タンパクのリボシル化を行うPARPファミリーの1つであり、Zn fingerをもつPARP7もHDACiと相互作用する可能性が考えられた。現在、PARP7の解析についても着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
[課題Ⅰ]受精卵におけるヒストンH2A.Zの除去過程で相互作用する因子の探索と機能解析 ①ヒストンH2A.Zの除去において卵子の活性化に伴う新規転写が関与している可能性が示されたが、母性因子の新規翻訳やユビキチン・プロテアソーム系による分解の関与について、シクロヘキサミドやMG132を用いた阻害実験により検証する。 ②GFP-H2A.ZおよびGFP-H2A.Z_XC23 mRNAを活性化卵子(6hpa)に導入・発現させ、2細胞期で胚を回収し、抗GFP抗体を結合した磁気ビーズを用いたCo-IPと質量分析によりヒストンH2A.Zの除去ならびにH2A.Z_XC23での除去回避の候補分子について探索する。 ③候補分子について、卵子でのノックダウンや培養細胞への強制発現等を行い、分子生物学、細胞生物学、3D-FISH解析等を用いてヒストンH2A.Zの除去の仕組みを明らかにする。 [課題Ⅱ]受精卵におけるHDAC阻害剤と相互作用する因子の探索と機能解 ④質量分析結果より得たHDACiと相互作用する候補分子について、卵子でのノックダウンや培養細胞への強制発現等を行い、分子生物学、細胞生物学、3D-FISH解析等を用いてH2A.Zの除去の仕組みを明らかにする。卵子のノックダウンには工夫が必要であるが、Trim-Away法やTPD(Targeted Protein Degradation)による候補分子の機能解析を行う予定である。 ⑤高分解能カラムを用いて質量分析を再度行ったところ、活性化卵子やMⅡ期卵子において転写調節や翻訳調節に関わるものが多く検出された。そこで、令和5年度は、新たに候補となる分子を抽出し、その関与について検証していく。 ⑥HDAC阻害剤を基点とするヒストンH2A.Zの除去機構ではたらく分子メカニズムについて、体細胞核移植胚を用いた評価により明らかにしていく。 [課題Ⅲ]ヒストンH2A.Zの除去機構を利用した新規リプログラミング支援技術の開発 ⑦ iPS細胞の樹立効率の改善や多様な種に対するユニバーサルな支援技術としての可能性を探っていく。
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Causes of Carryover |
令和4年度に実施したHDACiのDTX2の阻害によるリボシル化タンパク質の蓄積の検証において、当初仮定していた蓄積ではなく減少を示し、HDACiがその上流(タンパク質のリボシル化)にも干渉している可能性を見出した。本研究遂行上、この作用の本質を見極めることが重要となり、次年度において卵子や培養細胞を用いてタンパク質リボシル化酵素(PARP7)の機能解析を新たに行う必要が生じた。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] マウス受精卵におけるCyclin T1, T2の過剰発現が転写活性に及ぼす影響.2022
Author(s)
山中康平, 岡﨑祐樹, 妻木孝憲, 杉浦麻妃瑠, 大下莉奈, 大矢部和胡, 山本真穂子, 種子田妃良, 和田菜那美, 曾炫凱, 黒坂哲, 中家雅隆, 三谷匡.
Organizer
第40回日本受精着床学会総会・学術講演会
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[Presentation] マウス受精卵におけるCyclin T2a, T2bの発現解析.2022
Author(s)
杉浦麻妃瑠, 岡﨑祐樹, 山中康平, 妻木孝憲, 大下莉奈, 大矢部和胡, 山本真穂子, 種子田妃良, 和田菜那美, 曾炫凱, 黒坂哲, 中家雅隆, 三谷匡.
Organizer
第40回日本受精着床学会総会・学術講演会