2021 Fiscal Year Research-status Report
Visualization of critical neuronal circuits for the determination of diurnal animal behaviors using bioluminescence imaging
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21K06263
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池田 真行 富山大学, 大学本部, 理事・副学長 (10288053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲村 朋子 (吉川朋子) 富山大学, 学術研究部教育研究推進系, 准教授 (30451397)
今野 紀文 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (50507051)
森岡 絵里 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (80756122)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 体内時計 / 時計遺伝子 / 昼行性行動 / 発光イメージング / ナイルグラスラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昼行性グラスラットの睡眠覚醒リズムとこれに連動する脳内cFos遺伝子発現(第99回日本生理学会大会ポスター発表)、視床下部室傍核(PVN)や室傍核下部領域(SPZ)レーザーマイクロダイセクションによる、時計遺伝子発現リズムの解析(第28回日本時間生物学会学術大会,ポスター発表#1)、および視交叉上核(SCN)、SPZ、PVN領域の活動電位リズムやGABA受容体応答(第28回日本時間生物学会学術大会,ポスター発表#2)のそれぞれについて研究を進め、学会発表を行っている。また、関連する研究成果について、第99回日本生理学会大会公募シンポジウム「体内時計の静的持続性と動的適応性を基盤とする生理機能」において講演を行った。特に、急性脳スライスカルシウムイメージング法を用いたGABA受容体応答の解析においては、応答の昼夜差、マウスとナイルグラスラットとの種差について、PVNとSPZで詳細に解析し、SPZ領域において、もっとも大きな種差を認めたため、現在、このデータの論文の執筆を進めているところである。また、関連する視床下部の摂食制御神経回路についてコレシストキニン受容体とレプチン受容体の共役メカニズムについて総説をまとめ発表した(森岡絵里,池田真行 実験医学2021)。さらに体内時計と代謝系の相互作用についてCell Reports誌に論文を投稿中で、これについては次年度の掲載が決定した。これらを総括すると、次年度以降に、国際原著論文の発表が複数件見込める状況であり、研究はおおむね順調に進んでいると判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哺乳動物の概日行動リズムを調節する体内時計の中枢が、視床下部視交叉上核(SCN)に存在することや、SCNニューロンの自律振動を形成する仕組みとして、時計遺伝子の転写翻訳リズムが存在することは広く認められている。一方で、動物の行動リズムは、昼行性、夜行性、あるいは朝と夕に2つのピークを持つ双峰性といった多様性が存在するが、この行動リズムの表現型を決定する仕組みについては理解されていない。例えば、行動の昼・夜行性を問わず、SCNニューロンの活動リズムや時計遺伝子の転写リズムの位相角関係はほぼ一定であることが報告されているものの、SCNニューロンの振動が、どの脳神経回路を介して多様な行動リズムを決定しているのかについては、まったく未解決の問題である。本研究では、日本で先駆けて実験系統を確立したナイルグラスラット(Arvicanthis niloticus)を用いて、昼行性行動リズムの発現機構を発光イメージングにより解析する。本年度は、cFosの発現パターンを手掛かりに、SCNに最も近傍のSPZ(vSPZ)領域のGABA応答が、夜行性マウスと昼行性のナイルグラスラットで大きく異なることを明らかにした。つまり、夜行性マウスのvSPZは、GABA刺激で興奮性の応答示す細胞数が約8割であるのに対し、昼行性ナイルグラスラットではその半分以下の37-39%に留まっていた。よってこの部位は、概日位相の最初のリバースポイントである可能性が大きいことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかになったマウスとナイルグラスラットにおけるvSPZのGABA応答性の相違が、塩素イオントンラスポートに依存するのか、それとも神経回路形成に依存するのかを明らかにするために、GABA合成酵素であるGAD67およびGAD65の免疫染色をナイルグラスラットおよびマウスで比較し、さらに詳細に検討する。また、ナイルグラスラットの時計遺伝子リズムを計測するために、アデノウイルスベクターを用いて神経系にPer2ルシフェラーゼレポーターを発現させ、リズムの転換点を明らかにする実験をスタートさせる。この実験を円滑に進めるために、ナイルグラスラット由来の線維芽細胞由来の細胞株を作成しているので、まずは細胞株でのリズムを確認してから、視床下部スライスへのトランスフェクション実験を行う。AAV-P(Per2)-DIO-intron2-dLUC、AAV-hSyn-CreGFPなどの必要なプローブは名古屋大学小野先生より供与していただける予定となっており、準備を進めている。
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Causes of Carryover |
オンラインジャーナルCell Reports誌への論文掲載が決定したが、出版が次年度にずれ込み予定していた論文掲載費が次年度執行となったため。
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