2022 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the intraspecific diversity caused by the variations of physiological traits concerning anuran larval hibernation
Project/Area Number |
21K06302
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
島田 知彦 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30610638)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 越冬幼生 / 両生類 / 発生速度 / 成長速度 / 生物地理 / 齢査定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度実施した研究の内容は以下の3点である。 ①研究対象集団の遺伝的実態の解明と分類学的整理: 対象としているツチガエルの東海地方集団(Central)と北陸地方集団(North)について、主として核ゲノムのSNPs解析をもとに生物地理学的な関係性を明らかにした。これにより比べる対象群の実態が明らかになり、両集団の間の地域には中間的な集団が存在して遺伝的なクラインをなしていることもわかったが、比較に用いる予定の愛知県産集団と新潟県産集団はそのクラインの両極端の位置にあり、両者を比較することの妥当性が確かめられた。また、研究当初はミトコンドリアDNAの塩基配列に基づいて東海地方集団と近縁と考えていた関東地方集団(East)が実は未記載種であることがわかり、これについては新種記載を行った。 ②研究対象集団の齢査定: 対象としているツチガエルの東海地方集団(Central)と北陸地方集団(North)について、鎖骨切片の成長停止線のカウントによる齢査定を行い、基本的に両者の雌雄の性成熟齢に大きな差が見られないことを明らかにした。また補足データとして北陸地方集団と側所的に生息しているサドガエルについても齢査定を行った。 ③幼生飼育槽の開発と飼育実験の準備 本研究の中で重要な位置づけとなる飼育実験について、前年度は恒温器内での実施を試みたが良好な結果が得られなかったことを踏まえ、外気温での多頭個別飼育を可能にする循環水槽を野外に構築した。また愛知県下の3地点(田原市・安城市・新城市)と新潟県下の3地点(胎内市・上越市・十日町市)から越冬幼生をそれぞれ20個体ずつ集め、飼育実験を開始して継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる内容である低温条件下における幼生の発生、成長速度の地域間比較については、適切な飼育系を構築することに難航していたが、年度の後半から野外での飼育に切り替えることで安定した飼育設備を構築することができ、現在実験が進行中である。また、計画段階ではR5年度、R6年度に実施することにしていた齢査定と分子遺伝学的な研究を前倒しして実施して成果を挙げ、一部は論文として公表することができた。以上のような理由から、計画とはやや順序が違ってしまってはいるものの、全体としては順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主たる内容である低温条件下における幼生の発生、成長速度の地域間比較について、前年度の後半から本格的に実験を開始しており、今年度の夏までに成果が得られる見込みである。この成果を、既に得られている性成熟齢の知見や遺伝構造の知見に照らし合わせ、得られた結果について考察する。また、外気温を用いた実験は単年度では議論をしにくい側面があるため、今年度の秋口から次年度にかけ追加実験を行い、今年度得られた成果に再現性があるか否かを検証する。
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Causes of Carryover |
交付決定時の配分ではR5年度の配分が著しく少なく割り当てられており、これではR5年度に実施している研究内容を十分実施することができないため、R4年度の研究費支出を調整し、一部をR5年度に使用するものとした。研究内容自体については変更がなく、問題なく支出できる見込みである。
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