2021 Fiscal Year Research-status Report
Modulation of histaminergic neurotransmission and pharmacotherapy for drug abuse and dependence
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21K06591
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
北中 純一 兵庫医療大学, 薬学部, 准教授 (10278830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北中 順惠 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30340954)
木村 信也 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (70273703)
田中 康一 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (30274848)
西山 信好 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (20201692)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒスタミン / 中枢ヒスタミン神経 / 覚せい剤 / 依存 / 薬物療法 / 組織含量 |
Outline of Annual Research Achievements |
覚せい剤をマウスに投与した場合に生じる過運動(hyperlocomotion)に対して、ヒスタミンH3受容体逆作動薬を前処置した行動様式の解析において、(1)対照群としてのヒスタミンH3受容体逆作動薬の単独投与は何ら行動に影響を与えなかったこと、(2)覚せい剤z3 mg/kgを一度腹腔内投与した場合にヒスタミンH3受容体逆作動薬を前処置すると、ヒスタミンH3受容体逆作動薬の濃度依存的に覚せい剤による過運動が有意に抑制されたこと、(3)ヒスタミンH3受容体逆作動薬の種類によらず抑制効果が認められたこと、を見出した。この成績は、中枢性にヒスタミン含量を増加させるヒスタミンH3受容体逆作動薬投与は、覚せい剤陽性症状を改善するために有効な薬物療法の基盤をなす処置方法であると考えられた。中枢性に増加するヒスタミンの組織含量は、視床下部において顕著であったことから、ヒスタミン神経系の起始核におけるヒスタミン増加と考えられた。ヒスタミンH3受容体逆作動薬には末梢投与によって中枢へ移行するものが多く、覚せい剤依存に対するヒスタミンH3受容体逆作動薬の緩和効果を検討するにふさわしい薬物群と考えられた。同様に、中枢のヒスタミンを選択的に代謝する酵素、ヒスタミンN-メチル基転移酵素(HMT)の阻害薬metoprineを投与した場合も、同様に覚せい剤による過運動を有意に抑制することが見いだされた。このことから、脳ヒスタミン神経系の活性化は、覚せい剤依存を治療する薬物療法を考えるうえで、有効な戦略の一つと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、研究戦略として脳ヒスタミン神経系の有効性について、行動薬理学的に必要な最低限の知見が、上述のように得られたことから、順調に進展していると判断した。研究実施者は、ヒスタミンの組織含量を正確に定量する蛍光式HPLCシステムを構築しており、そのシステムの有効性が本課題において認められたことも、進展が順調であることを示している。行動様式の、神経伝達物質の挙動を加味した評価をできうることを示したことは、これからの研究に有効に用いることができると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
組織のヒスタミン含量が脳内で増加することから、覚せい剤陽性症状緩和への分子メカニズムの解明が重要となる。この点について、現在特にglycogen synthase kinase 3(GSK-3)酵素の働きを想定しており、その選択的阻害薬を用いた行動様式の変化を確認しようと計画している。この研究に用いることができる薬物はすでに複数種類入手しており、実際SB216763などいくつかについてpilot studyを進めている。さらに覚せい剤陽性症状のうち、依存確立に強く寄与することが分かっている行動感作に対するヒスタミンH3受容体逆作動薬およびGSK-3阻害薬の効果も検討中であり、抹消作用としての血圧の変動と併せてヒスタミン神経系による依存緩和のメカニズムに迫りたい。
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Causes of Carryover |
計画そのものはおおむね順調に進行している。むしろ予定していた実験動物の使用匹数を少なく実施できたため、経費に残金が生じたこと、学会発表などへの支出がコロナ禍でほぼなかったことによる。
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